だが、現代のマフィア稼業は映画『ゴッドファーザー』や『グッドフェローズ』のように、ある種のノスタルジーを感じさせる華やかなバブリー感とは無縁だ。RICO ACT(RICO法=日本の暴対法に当たる)の締め付けは厳しさを増し、FBIは手段を選ばず、トニーの商売敵から仲間内、時には身内にまで司法取引を持ちかけて、トニーたちのしっぽをつかまえようと血道を上げている。
また、ソプラノファミリーは大きな勢力ではあるが、上には上がいる。ニューヨークの5大ファミリーの幹部連中からは、つねに無理な要求を強いられ、彼らの顔色をうかがいながらファミリーの勢力を維持するためには、政治的手腕がモノを言う。腕っぷしや度胸だけで何とかなる世界ではないのだ。
中間管理職の悩みと同じ
部下たちからの不満も絶えない。無能なボスへの不満を筆頭に、稼ぎの割には身入りが少ない、誰それに比べて自分のほうが成果を上げているのに認められていない等々。早く正式メンバーとして認めてもらいたい血気盛んな若者クリスが、無謀な行動に走らないよう監視するのも一苦労だ。トニーはそれぞれに対処しながら、なだめたりすかしたり、時には脅して有無を言わせず黙らせることもある。
しかし、何よりもやっかいなのは、偏屈なアンクル・ジュニアとトラブルメーカーの姉ジャニス、そしてアルツハイマーのせいもあるとはいえ、ごうつくで辛辣な物言いをする実の母親リヴィアの存在だ。親族との関係が最も気が抜けないのは、マフィア一家に生まれた業だろうか。
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