「体型に合わせたスーツ」がお洒落に見えない理由 「体に服を合わせる」のは和装、スーツではNG
例えば葬式にTシャツで行く人は、まずいないですよね。それは葬式という場面のTPOがわかりやすいからです。しかしビジネスにおいては、どのようなTPOなのかがわかりにくい場面も多いため、TPOをないがしろにしがちです。
また、以前であればビジネス=スーツを着るのが常識とされていましたが、今ではその常識も大きく変化をしてきて、スーツでなくても問題がない場面も増えてきました。「何を着るかは自分で決めてね」と言われた瞬間、何を着たらいいのかがわからなくなるのです。結果として、ビジネスファッションが優先される場面にオシャレファッションを気づかないうちに取り込んでしまい、失敗している人も散見されます。
黒いタートルネックにデニムがトレードマークだったスティーブ・ジョブズ氏は、おそらく「オシャレですね!」と言われたことはほとんどないでしょう。ただ、ビジネスファッションでは、オシャレである必要はないのです。
オシャレファッションをビジネスファッションに持ち込む弊害は、ほかにもあります。オシャレはあくまでその日の気分で着ることも多いのですが、ビジネスファッションでの正解は、自分が何者であるのかを正確に伝えることにあります。服が変わると、相手に伝えるメッセージが変わるわけですから、相手には何も伝わらなくなってしまうこともあるのです。
さらに追い打ちをかけることを申し上げますと、言っていることがコロコロ変わる人って、信頼できませんし、仕事こそ一緒にしたくないですよね? 服装を変えることで伝えていることも変わるわけですから、信頼を失うことにつながる可能性もありうるわけです。
“一張羅のスーツ”は作ってはならない
かといって、気合を入れて奮発して仕立てた立派な「一張羅のスーツ」をここぞというときに着ればいいかといえばそうではありません。服に愛着を持つのはいいことですが、勝負服や一張羅として身構えてしまうと、望まない結果に終わることが多々あります。
実は私にも、そんな経験があるのです……。当時25歳だった私は、東京・西麻布にある高級店で、生まれて初めてオーダーでスーツを仕立てました。重厚な作りで、冷やかしや一見さんお断り的な雰囲気漂う店です。VIP待遇されたような接客を受け、ジャズが流れる店内でエスプレッソをいただきながら生地を選び、いろいろな仕様にこだわってスーツを仕立てました。スーツの価格は25万円近くしたのですが、急に大人の階段を上がったような感覚になり、スーツ自体の出来栄えもすばらしく、そのときに私はこう思ったのです。
「よし、このスーツは一張羅にして、ここぞという場面で着る勝負服にしよう!」
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