習主席の「共同富裕」政策巡り国内で異例の論争 言論界での意見対立は中国内部での混乱を示唆

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当局に反対する見方を定期的に検閲する中国では異例なことだ。共産党の習近平総書記(国家主席)の「共同富裕」(共に豊かになる)政策を巡り論争が起きている。

習氏が進める規制上の取り締まりは国全体に及ぶ深淵な「変革」だとするブロガー、李光満氏の論評が先月、国営メディアに一斉に掲載された。「資本市場はもはや資本家が一夜にして金持ちになる楽園にはならない」とするこの論評は、「この人民中心の変革を阻む者は全て処分される」と主張した。

習氏の取り締まりは中国全体に及ぶ「変革」-国営メディアが論評掲載

これにかみついているのが環球時報の胡錫進編集長らだ。共産党機関紙、人民日報の系列紙である環球時報はタカ派的な論調で知られているが、計画されている変革は最高指導部からの統一した政策の結果だと反論。第2の「文化大革命」を連想させるような全面的な運動ではなく、漸進的な社会的進歩が目的だと論じた。

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環球時報の胡錫進編集長 

ジャーナリストの拘束も珍しくない中国の厳格に管理された言論界で繰り広げられている意見対立は、習氏が「無秩序な資本拡大」をどこまで抑制しようとしているのかを巡り、中国内部で混乱が生じていることを示唆している。

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1980年代に中国の改革開放政策を率いたかつての最高指導者、故・鄧小平氏の通訳を務めた高志凱氏によれば、共同富裕についての議論は「非常にセンシティブ」で、最高指導部からのメッセージは巨大な官僚機構を通過する中で「誇張される」可能性がある。

高氏は7日、ブルームバーグテレビジョンで「共同富裕が過度なキャンペーンとなる危険性を警戒する必要がある」と述べ、そのような展開はビジネスを阻害し、中国の競争力を損ねる恐れがあると指摘。「例えば私は個人的に共同富裕の追求がイノベーションや創造性、起業家精神を損なうような状況を見たくない。まさにこれらは、中国が今現在と向こう何年にもわたって必要としていることだからだ」と語った。

 

習近平氏を描いた看板(上海) 

原題:Xi’s Common Prosperity Drive Triggers a Rare Debate in China(抜粋)

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著者:Bloomberg News

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