大阪IR誘致、政府の「ソロバン勘定」は正しいか 外資と天下り組織に流れる日本人客の賭け金

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日本では競馬、競輪、競艇といった公営ギャンブルへのアクセスが極めて容易なうえ、全国津々浦々、事実上の賭場であるパチンコ店が存在する。そこに3か所のカジノが加わったところで依存症が劇的に増えるとは想像しにくい。

確かにカジノならではのカードゲームやルーレットにハマる人はいるだろう。しかしそれとてオンラインゲームがあふれる現状では抜け道はいくらでもある。

日本ではこれまで公的なギャンブル依存症対策がほとんどなかった。それが必要ならIR設置の是非以前に、まず公営ギャンブルやパチンコを対象に取り組みを始めるべきだろう。

政府から納得のゆく説明はない

私はカジノやギャンブルを毛嫌いしているわけではない。のめり込むほどではないが、競馬、麻雀、パチンコと一通りは手をつけてきた。アメリカ・ラスベガスやマカオ、シンガポール、フィリピン、タイ・カンボジア国境、ベトナムなどでもカジノに足を運び、少額にしろ賭けてもきた。

そんな私が腑に落ちないのは、政府や推進派が言うようにIR設置が果たして経済成長や地域の活性化に結び付くのか。そろばん勘定は本当に合うのかという点だ。この点について、政府から納得のゆく説明や情報開示はこれまでなされていない。

カジノそのものはどの施設でも大きな違いはない。スロットマシーンとルーレット台、バカラなどカードのテーブルがある。いずれも窓のない広いフロアに台やマシーンが並ぶだけで場内の差別化は難しい。IRが街や地域を活性化させるかどうかは賭場以外の魅力や条件に左右される。

かつてマフィアの縄張りとして名を馳せていたラスベガスは、ネバダ州がゲーミング・コミッションやゲーミング・コントロール・ボードといった公的機関を設立し、時間をかけて反社会的勢力を排除したとされる。

シルク・ドゥ・ソレイユをはじめとする大規模かつ豪華なショーの数々がホテルで催され、暴力とイカサマがはびこる賭事の街から総合エンターテインメントの首都へと脱皮した。セリーヌ・ディオンやレディー・ガガ、ブルーノ・マーズらトップアーティストが連日公演し、ボクシングの世界タイトル戦が繰り広げられる。老若男女だれもがエンタメを楽しめるIR都市は世界でもラスベガスだけだ。

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