波乱もありうるジャクソンホール後の市場展望 スタグフレーション的ムード台頭にも警戒

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今後の焦点は、テーパリング完了と利上げ開始(ゼロ金利政策の解除)の時期がいつか、そして株式や債券などの金融市場がこうしたアメリカの超金融緩和の出口政策にどう反応するかだ。

今回の講演でパウエル議長は、金融緩和の長期化に前向きな“ハト派的コメント”を付け加えて市場を喜ばせている。20分余りの講演の終盤、同議長はこう述べた。

「(量的緩和による)資産購入が終わっても、FRBが積み上げた長期証券の保有残高は緩和的な金融状況をサポートし続ける。今後の資産購入の縮小(テーパリング)の時期とペースは、利上げ開始の時期に関して直接のシグナルを送るものではない」

FRBは利上げ開始の条件についてこれまで、「経済が最大雇用と矛盾しない状態に達し、インフレが2%をやや上回る水準で軌道化すること」としてきた。パウエル氏は今回、「最大雇用に到達するまでには、満たすべき条件はまだ非常に多い。2%のインフレが持続的なものかどうかも時が経ってみないとわからない」とも述べ、テーパリングを年内に始めるとしても、利上げを始めるのはまだかなり先になることを示唆したのだ。

「利上げは遠い」と市場は好感したが…

同議長の講演はアメリカ東部時間の午前10時(日本時間の午後11時)過ぎからだったが、この日のNY株式市場は「テーパリングが始まっても、利上げはまだ遠い」とポジティブに受け止め、NYダウが前日比242ドル高の3万5455ドルに上昇。S&P500指数やナスダック総合指数は史上最高値を更新した。アメリカ国債も買われて価格が上昇し、10年物国債利回りは同0.04%低い1.31%で取引を終えた。

テーパリングが開始されれば、FRBによる市場へのマネーの新規供給が少しずつ減らされていくが、供給されたマネーの残高(FRBのバランスシート)はテーパリングが完了するまでなお増え続ける。その意味では、金融緩和の方向性自体には変わりはなく、金融引き締めに相当する利上げやFRBのバランスシート縮小(マネーの吸収)とは段階が違う。

そうは言っても、テーパリング開始はコロナ禍の急襲によって昨年3月に導入された超金融緩和政策の転機を意味する。2013年には、当時のベン・バーナンキFRB議長が市場の想定より早いテーパリング開始を突然示唆し、新興国を含めた世界の金融市場に混乱が広がった。パウエル氏はこの「テーパー・タントラム」と呼ばれる混乱を教訓として、慎重に市場との対話を進めており、今のところ市場の大きな動揺はうまく回避されていると言っていい。

しかし、先行きには多大な不確実性が存在しており、金融市場はなお波乱含みといえる。

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