西武、「USJ復活の立役者」に託す遊園地の再生 西武HD後藤社長✕刀・森岡CEOスペシャル対談

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森岡:西武園ゆうえんちとUSJには違いがある。当時のUSJは来場者数が落ち込んでいたといっても700万人いた。それに比べ、西武園ゆうえんちの来場者数はその10分の1にも満たない。リニューアルするにしても事業規模が違うので投資できる予算には限りがある。

ダークライド(屋内型コースター)「ゴジラ・ザ・ライド」のイメージ(写真:TM & © TOHO CO., LTD.)

でも、人を喜ばせるのは予算ありきではない。お金があればいろいろな選択肢が増えるが、お金イコール、アイデアではない。人を喜ばせるため、驚かせるためには何が必要なのか。それはアトラクションにおいてお客様は傍観者ではなく、お客様自身が怪獣対怪獣の戦いの中に巻き込まれて、そこから逃げ出すというストーリーの中に入ってもらうことだ。お客様もそれを期待している。

とはいえ、すぐに戦いが始まったら逆にどん引きしてしまう。どうすれば期待をもたせながら、どん引きにならないように、うまく気持ちのモードを切り替えて、ストーリーの当事者になってもらえるか。刀はそのノウハウに非常に長けているので、存分にトライさせていただいた。

何度も実験を重ねて、今の段階ではああいう形になっているが、中のプログラムを変えればいろいろなことができる。映像を作り変えればまったく新しいアトラクションになる。その可変性は最初から考えて仕込んである。

乗るまでの体験が重要

――待ち時間も楽しいです。列に並んでいる人たちに「特殊災害対策部隊」の隊員に扮したスタッフが「大変です」と呼びかけてくる。

もりおか・つよし/1972年生まれ。神戸大学経営学部卒業後、1996年P&G入社。2004年P&G世界本社へ転籍、北米パンテーンのブランドマネージャーなどを経て、2010年USJ入社。USJ再建の使命完了後、2017年にマーケティング精鋭集団「株式会社 刀」を設立(撮影:尾形文繁)

森岡:ライドにたどり着くまでの導線が実は鍵を握っている。乗る前から興奮の連鎖は始まっていて、どこかで連鎖が切れると、最悪の場合、アトラクションの興奮がゼロになる。つまり、乗るまでの体験が一定レベル以上でないと乗っても楽しく感じられない。

私はダークライドをたくさん手がけてきたが、これらの多くはアメリカ人が考えたプロトタイプに私たちが手を加えて、日本人がアメリカのオリジナルよりも面白く感じられるようにした。例えて言えば、「ガンダム」を「ジム(GM)」にしたようなものだ。あ、ジムにしたというのは高度な機能や装備を外したことだから意味が逆だね。ガンダムに「マグネットコーティング」を施したようなものだ。私と同じ世代の人はわかると思う。わからなかったらカットしてください(笑)。

――わかります(笑)。

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