西武、「USJ復活の立役者」に託す遊園地の再生 西武HD後藤社長✕刀・森岡CEOスペシャル対談

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――話を振り出しに戻します。後藤さんが西武園ゆうえんちをリニューアルしなくてはいけないと感じたのはいつで、そのきっかけは何だったのでしょうか。

後藤:西武園ゆうえんちはピーク時の1988年には194万人の来場者があったが、その後は目立ったリニューアルをしてこなかったので、だんだん飽きられてきた。2018年には来場者が50万人を切っていた。このままでは先行きが立ち行かないという危機感から、2017年ごろから西武園ゆうえんちのバリューアップの必要性を考え始めていた。

また、西武鉄道沿線にはとしまえんという遊園地もあったが、こちらは昨年8月31日に閉園して、2023年に「ハリー・ポッター」の体験型施設「スタジオツアー東京-メイキングオブハリー・ポッター」として生まれ変わる。そうすると、西武鉄道沿線の遊園地は西武園ゆうえんちしかないが、従来の発想の延長線上で投資をしても、おそらく生まれ変わることはできない。そんな問題意識を持っていたとき、たまたま森岡さんと知り合った。

――森岡さんがUSJ復活の立役者ということはご存じでしたか。

後藤:もちろん知っていた。森岡さんは情熱があって、エンターテインメントビジネスに対する造詣が深くて、何より数字がポンポン出てくる。最初はその数字にはどの程度信憑性があるのかと思っていたが、彼の話を聞くうち、ぜひこの人に西武園ゆうえんちのリニューアルを託したいと思うようになった。

難易度高くても「やらなければ」

――どんなふうにお願いしたのですか。

西武HDの後藤社長(左)と刀の森岡CEO(撮影:尾形文繁)

後藤:彼の手を握って、「よろしくお願いしたい」と伝えた。その後に「ただし、予算は100億円です」と付け加えた。そうしたら森岡さんは、「え、100億円ですか」と。USJでは、ちょっとしたアトラクションに投資するだけで、すぐそのくらいの金額になってしまう。森岡さんは「1桁足りない」と思ったんじゃないかな。もしかしたら、森岡さんの頭の中では葛藤があったかもしれないが、男気を出して引き受けてくれた。

――実際のところ、森岡さんは葛藤したのですか。

森岡:実は昔、USJの再建がそこそこうまくいっているとき、あるメディア関係の方から「USJは大きなテーマパークだからうまくいったんでしょ。もし西武園ゆうえんちをなんとかできたら本物だと認めますよ」と言われたことがある(一同笑う)。

メディアがそこまで言うほど西武園ゆうえんちは大変な状態なのかという印象を持った。それで後藤さんにお会いした後、西武園ゆうえんちの話を具体的にお聞きするまでの間に、猛烈に勉強した。実際のところ、西武園ゆうえんちの再生は難易度が高いプロジェクトになるとは思った。さりながら、後藤さんにお願いされているのにやらないというのは、死ぬときにめちゃ後悔するだろうなと。

USJでそこそこの実績は挙げていたとはいえ、2017年に刀というベンチャーを創業したばかりの私たちにわざわざお声がけいただいたのに「自信がないからやらない」なんて言ったら、一生悔いが残る。だから、やれるかやれないかではなく、「やりたい」「やらねばいけない」と思った。まあ、調べれば調べるほど、難易度はどんどん高くなったが。

<後編に続く>

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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