公道での傍若無人な「撮り鉄」、法律上の問題点 交通の妨害は法律違反、怒鳴りつけるのは論外

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とここまで書いてきて、気分が悪くなってきた。幼いころから楽しんできた一生の趣味の1つである鉄道趣味で法律を話題にすること自体残念極まりないからである。同じ趣味を持つ者の行為に法律(しかも刑事法)が絡んでくる話をする恥ずかしさと、情けなさとが渦巻く。こんなことのために法律の勉強をしているわけでもないのに、とも思う。一方で、撮り鉄の諸問題を検討することがかえって法律の勉強になるところもあって、複雑な気持ちにもなる。

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最近、列車内や駅構内で、俳優の藤岡弘、が腕を組んだ写真に「人を殴るのは、悪いこと。大の大人に、言うことじゃないよな。」と記載してある啓発ポスターを見る。

「殴っちゃだめですよ」というのと同様「他人への迷惑行為はやめなさいよ」と注意するのは大の大人に言うことではないし、中学生、高校生くらいならわかる話である。不注意で人の迷惑になってしまったのなら百歩譲って仕方ない面もあるが、注意をされれば直すだろう。指摘されても逆に怒り出すとか、そもそも注意を払わないというのであればまったく問題外である。

「同じ穴の狢かも」と自覚する

そしてまた、「少数の撮り鉄が迷惑行為を起こしているのであって、大多数は問題を起こしていない」といくら言っても、傍から見れば鉄道趣味人全員をひとくくりに判断されてもやむをえない。

「自分は迷惑行為などしない」とアピールしても、では、人が集まっている撮影地に行ったことがない撮り鉄はいるのだろうか。皆無に近いだろう。

撮影者1人ひとりの意識が大切だ(写真:kou/PIXTA)

私は周りにほかの撮り鉄がいないところで撮影することも多いが、その昔深名線のポンコタン鉄橋や、餘部駅そばの撮影地で旧余部鉄橋を走行してくる181系気動車の特急「はまかぜ」の写真を撮ったこともある。周りには私以外にも撮り鉄が多数いた。そこで迷惑行為が起こっていれば私も含めて「なんだあいつらは」となったはずである。そもそも今まで40年近くまったく人に迷惑をかけずに撮影したと言い切れる自信もない。

鉄道趣味人それぞれが、「自分は一部の問題を起こす者とは違う」と思わずに、自分も問題を起こしているかもしれない、と考えつつ顧みてほしい。他人からは同じ穴の狢に見られていると意識を持って1人ひとりが気をつけていけば、迷惑行為も徐々にでも減らしていけると思う。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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