次世代鉄道の切り札?「水素技術」開発競争が激化 各国メーカーが注目、トヨタの燃料電池活用も

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化石燃料依存からの脱却にはスイスと同じように電化促進が望ましく、実際に各国で非電化路線の電化工事が進んではいるものの、多額の費用と長期間の工事を必要とする。水素燃料や蓄電池といった技術は、既存のシステムを大きく変えることなく、手っ取り早く温室効果ガスの排出抑制を達成できる手段として注目を集めている。

電化工事中の英国の幹線(グレートウェスタン鉄道、現在は完成)。電化のため、多くのトンネルや橋を改修する大工事となった(筆者撮影)

FCH2RAILプロジェクトにおいては、電化区間では架線からの電気を動力源として使用し、非電化区間で燃料電池ハイブリッドシステムへ切り替えることで、エネルギー消費を最小限に抑制したバイモード仕様となる。つまり、電車としてのシステムを残しつつ、非電化区間では架線から得られる電気以外を動力源として運転する。新車だけではなく、既存の電車やディーゼルカーを直接改造することで、大幅な排気ガス抑制効果が期待できると注目されている。

トヨタは、燃料電池自動車MIRAIや燃料電池バスSORAで培った技術があり、前述のとおりJR東日本と日立製作所と共同で鉄道車両についても開発を進めている。この技術は海外でも注目を集め、ポルトガルのバス製造会社カエタノ・バスの水素燃料バスの商用化に協力。現在は同社へ出資して提携を強化している。今回のプロジェクトへの参加は、トヨタの技術が世界に認められた証と言えるだろう。

開発を急ぐ欧州メーカー各社

ほかのメーカーも水素燃料を活用する技術の開発を急いでいる。フランスのアルストムは早くから水素燃料車両の開発に取り組んでおり、2016年開催の国際鉄道技術見本市・イノトランスでは早くも燃料電池による動力を搭載した車両「コラディア(Coradia)iLINT」を発表。現在はベースとなる車両を「コラディア・メリディアン」へ変更したうえで、フランス国鉄(SNCF)との契約を結んだ。

煙を吐くディーゼル機関車(フランス国鉄)。排気ガスがない車両の開発は鉄道会社にとっての悲願だ(筆者撮影)

ドイツのシーメンスも、2021年7月に南ドイツを拠点とする運行会社のバイエルン地域鉄道へ、近郊型車両「ミレオ(Mireo)」シリーズをベースにした燃料電池車両を試験導入すると発表している。この新型車両はバッテリーと組み合わせたハイブリッド仕様で、最大800kmの航続距離を実現するという。水素燃料車両の導入に関しては、燃料供給ステーションの建設までセットとなることから、メーカーにとっては大きなビジネスチャンスとなる点も、各社が急ピッチで開発を進める理由だ。

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