暑い?寒い?それでも「電車の冷房」は進化している 苦情絶えないが、乗るほうだって対策が必要だ

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家庭用のエアコンでも臭気に対して諸々の対策が見られるが、結局のところはマメに清掃するのが最も効果的な対応となるようだ。電車でも定期的な清掃が行われていて、風道と呼ばれる冷房装置から冷房の吹出口に通じる部品のほか、横流ファンや冷房装置の本体なども定期的に取り外して内部の清掃を行っている。

以前、電車の撮影で車両基地を取材した際に、冷房の風道を清掃する作業を見ることができた。天井を分解してほこりを払うのだが、払ったほこりが電車の床に散乱するありさまで、作業には大変な手間がかかっている。

「快適が当然」が悩みの種

これ以外にも、鉄道車両用の抗菌・消臭剤というものがある。こちらも冷房装置や風道、吹出口へ定期的に噴霧することで、臭いの発生を抑制している。

現在では、冷房関係の清掃や消臭剤の噴霧のタイミングといった「臭い対応」のノウハウが確立され、カビ臭い電車はほとんどなくなっている。

冷房のパワーアップや臭いへの対処といった話は、ここ10~20年で急速に進んだものだ。今回は書ききれなかったが、混雑や車内外の温度・湿度に応じて冷房装置をコントロールする技術も進み、過去に比べれば、「暑い」「寒い」「臭い」といった不快な事柄への対処はかなり進化した。だが、快適なことが当然とされ、世間的に評価されないのが現状だ。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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