新幹線開業で主役交代、在来線「長崎本線」の現状 引き続きJR九州が運営する区間の将来の姿は?

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博多―佐賀間は現在も上下計82本の特急で結ばれ、距離も53.6kmとさほどではない。所要時間の約40分(新鳥栖で九州新幹線と乗り継ぐと約35分)から約20分への短縮はどう見るかだが、停車駅が減って料金も上がるため、地元利用者の乗り換えや財布の負担はかえって増えるーーなどである。そこで1992年当時、博多―武雄温泉間については在来線を活用して新線に直通させるスーパー特急方式で話が進展し、武雄から嬉野、大村を経て諫早、長崎に抜ける新線建設については合意が成った。

しかし、並行在来線の経営分離問題が残った。武雄温泉経由となった新幹線(スーパー特急)に対して、肥前鹿島経由の長崎本線が並行在来線とされ、在来線維持の負担や廃止の心配だけを押し付けられるとして、鹿島市などがなおも新幹線反対を唱えた。西九州ルートは出遅れた。

そこで長崎県やJR九州と佐賀県の間の協議の末、長崎本線肥前山口ー諫早間は両県または第三セクターで線路を保有、新幹線開業から20年間の運営はJR九州が行う上下分離方式で維持する案で2007年末に合意(この後、スーパー特急に替えて導入計画が立てられたフリーゲージトレインの開発の遅れを理由に、JRによる運行は23年間に延長)された。また、低コスト化のため非電化への切り替えが計画されたが、同時に博多ー肥前鹿島間に特急列車を電車で運転するとして、肥前鹿島まで電化設備を残すこととなった。

つまり肥前鹿島は、新たな運営方式となる区間の中心的位置にあり、特急のターミナルという要衝になるわけである。なお、具体的な検討の中で、手狭な肥前鹿島駅には折り返し設備等を整えることが困難とされ、今年6月に1つ先の肥前浜まで電化を維持することが明らかにされた。

佐賀県が復元した伝統的建造物の町の最寄り駅

肥前鹿島途中下車の後は各駅停車でローカル輸送を実体験することにした。

肥前鹿島までの在来線特急運転継続に際して電化区間の終端とされる肥前浜駅。駅舎は再整備され案内所やバーも併設されている(写真:久保田 敦)

そこで祐徳稲荷により近い、1つ長崎寄りの肥前浜駅に出てみると、なんともこちらに特急を停めてくれた方が観光にはうれしい、といった駅だった。

駅の至近に多良街道(旧長崎街道の脇街道)の肥前浜宿、本誌連載(2019年9月号)でも紹介した国重要伝統的建造物群保存地区の町並みが残されており、複数の酒蔵もあってそそられる。木造駅舎は県により美しく復元され、銘酒を提供するバーも併設された。

駅前から見ると、駅舎入口を額縁に豊穣の田園が切り取られる。その風情とあって、昨年10月に運転を開始した新しい観光列車の「36ぷらす3」が月曜日の長崎運行の際の往路に同駅に約50分停車し、地元の“おもてなし”や散策が楽しめるのだった。

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