新幹線開業で主役交代、在来線「長崎本線」の現状 引き続きJR九州が運営する区間の将来の姿は?

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駅構内は千鳥配置の2面3線で、新幹線開業後には電車列車の折り返し駅となる。その時、果たして特急はここまで乗り入れ、あまり知られていない観光地の再発掘に結び付けられるだろうか。ぜひにもそうした方向へ動いてほしいと思う場所である。

肥前山口―諫早間を通り抜ける普通列車は1日6.5往復。朝の通学列車の次は午後、土曜日の帰宅用で1本、そして夕夜間に数本というダイヤ構成で、典型的なローカル線のそれである。13時29分の普通長崎行きは817系2両編成で現れ、平日だが高校生が乗車していた。

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佐賀県から長崎県に入る線路は有明海の入江に沿って急カーブを繰り返し、振子特急も速度を抑え車輪を鳴らして走る区間だ。その隘路ゆえに新幹線は佐世保線側の内陸を貫くルートを選択した。ひとかどの街の多良でほとんどの生徒が下車し、同町内にある高校の生徒が数人加わったが次の肥前大浦で車内に残ったのは大人が数人となった。小長井との間の県境は高校生の流動もない。

海岸線を大きく回ると雲仙が姿を現し、島原半島入口の諫早へ向かう。長崎県側の動きがチラホラ加わってくるものの、実態は佐賀県側と五十歩百歩。事業構造が変化した後は効率化を図った運営がなされるというが、「JRによって残るからよい」の姿勢では以後が案じられる。知られざる景勝路線であるだけに、県や地元の積極性も必要だ。

新幹線開業後は長崎の都市圏区間も非電化に

諫早で西九州新幹線と対面する。架線はまだとは言え、すでに工事中の雰囲気を感じさせないほど完成域に達している。大村線と合流して長崎の都市圏輸送エリアに入り、普通・快速列車は日中毎時2本の運転。乗客が増える。また、九州では特急料金に25kmまでの設定があり、諫早―長崎間は自由席310円のため、「かもめ」で移動する人も見られる。

諫早―長崎間の在来線は、新幹線開業後もJR九州の第一種事業が継続される。しかしその一方、肥前浜―諫早間が非電化になり、もとより大村線は非電化の現況では「電化設備を必要とする車両の運行ができなくなる」として、ここも非電化に改められることが決まっている。

一気に長崎市街地に出る長崎トンネルを抜けると、姿を一変させた浦上駅に着いた。長崎市内の連続立体交差化により2020年3月に島式1面2線の高架駅になったのである。そこからは複線高架をたどり長崎へ。最後の最後までトンネルが続く西九州新幹線が急斜面の宅地から現れると同時に、高架上に新設された留置線に幾編成ものYC-1系を見て、唐八景の山を前方に長崎駅に進入する。

工事は内装段階に漕ぎ着けている長崎駅の新幹線ホーム 在来線に隣接して2面4線のホームが建設された(写真:久保田 敦)

現在の高架駅は、元の地上ホームに並んでいた車両基地跡地に建設され、そのぶん駅前の通りから大きくセットバックした。在来線ホームは2面5線で、表側に建設中の新幹線駅が一段高い位置に並ぶ。ホームも床のタイル張りなど内装工事が進んでいるようだ。

駅を出ると、通りと新しい高架駅の間は仮設通路が通じている。現在、長崎市による駅前広場整備に入ったところで、新幹線開業時は途上、2024年春完成が予定される。一時は路面電車を駅近に引き込む構想も持たれたが、事業者の長崎電軌は所要時間が延びるとして実施しないことを決定、現状が維持される。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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