コロナ禍「温室効果ガス5%削減」が意味すること ビル・ゲイツ氏が語るネットゼロへの取り組み

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その結果、2020年11月までに4億4500万ドルを超える資金をこの病気との闘いに費やし、低所得国にワクチンや検査手段、その他の重要物資をより早く届けられるように、さまざまな投資を通じてさらに数億ドルを使った。

経済活動がかなり低迷したため、2020年の温室効果ガス排出量は前年より減るだろう。先に述べたとおり、おそらく5%ほどの減少になる。要するに510億トン相当の炭素を排出していたのが、480億〜490億トンになるわけだ。これは有意義な削減量であり、毎年このペースで排出削減が続けばすばらしい。しかし、残念ながらそれは不可能だ。

この5%の排出削減を成し遂げるのに、どれだけの犠牲を払ったか考えてみてほしい。数百万人が死亡し、数千万人が失業したのだ。控えめにいっても、こうした状況が続いたり、繰り返されたりするのを望む人はいないだろう。

それに、これだけの犠牲を払ったにもかかわらず、世界の温室効果ガス排出量はおそらくたった5%しか減らなかった。それより少ない可能性もある。僕にとっての驚きは、パンデミックによって温室効果ガス排出が大幅に減ったことではなく、ほんのわずかしか減らなかったことだ。

「これまで通り」では未来は暗い

たったこれだけしか排出量が減らなかったことを見ても、飛行機や自動車での移動を減らすだけでは、あるいはおもにそれに取り組むだけでは、排出ゼロは達成できないことがわかる。新型コロナウイルスに対処するための新しい検査法、治療法、ワクチンが必要なのと同じで、気候変動と闘うためにも新しい手段が必要だ。

つまり炭素を排出しない発電、ものづくり、食料生産、冷暖房、世界での移動と輸送の新しい手段が求められる。それに世界の最も貧しい人たち(その多くが小規模農家だ)が、温暖化した気候に適応できるよう手助けする新たなシーズとイノベーションも必要だ。

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