国際社会はBRICsを過大に評価している--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授
BRICsの会談は短期的な外交戦略を調整するには有益かもしれない。しかし、BRICsは、本質的に性質が大きく異なる国々をひとくくりにしている。
真剣な政治的組織にBRICsはならない
元超大国ロシアを他の3カ国と一緒にくくるのは無理がある。4カ国のうちロシアは最も人口が少ないが、最も識字率が高く、1人当たりGDPもはるかに大きい。そして、より重要な点は、ロシアは衰退国であるのに対し、他の3カ国のパワーは上昇しているということだ。
現在、ロシアは世界不況の後遺症に苦しんでいるだけでなく、輸出の石油依存や人口問題など長期的な課題にも直面している。最近、英フィナンシャル・タイムズ紙は「20年前のロシアは科学の超大国であり、科学技術への支出額は中国、インド、ブラジルの3カ国を合計した額より大きかった。だがその後ロシアは、急成長を遂げる3カ国に取り残されている」と指摘した。
詳細に統計を見ると、BRICsの核心は中国経済の台頭にあることがわかる。ブラジルの果たしている役割も思った以上に大きい。
01年時点で英『エコノミスト』誌はブラジルをBRICsに含めることに対し懐疑的な主張を掲載した。「成長率が低く、金融危機の犠牲になりやすく、慢性的に政治不安で、無限の能力がありながら有能な人材を浪費している国が、急成長する新興国の一角に食い込めるとは思えない」。
だが今日では『エコノミスト』誌も認めるように、ある意味でブラジルは他のBRICsを凌駕している。中国と違いブラジルは民主国家である。インドと違い国内の紛争はない。人種的・宗教的な対立もなく、敵対する隣国も存在しない。ロシアと違い、石油や武器の輸出に依存せず、海外の投資家に敬意を払っている。