国際社会はBRICsを過大に評価している--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

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 ブラジルは1990年代以降、インフレ抑制と市場改革に成功し、5%台の成長を達成している。国土はインドとほぼ同じ広さで、2億人の人口のうち90%は読み書きができる。2兆ドルのGDPはロシアに匹敵し、1人当たりGDPは1万ドルに上る。これはインドの3倍、中国のほぼ2倍だ。また07年に沖合に油脈を発見したことで、エネルギー分野でも大国の座が約束されている。

もちろん他のBRICsと同様、ブラジルは深刻な問題も抱える。国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」の「腐敗認識指数」において、ブラジルは180国中75位(中国79位、インド84位、ロシア146位)。世界経済フォーラムの経済競争力調査でも133国中56位にすぎない(中国29位、インド49位、ロシア63位)。貧困と格差も頭痛の種だ。ブラジルのジニ係数は0・57(数値が1に近いほど格差が大きい)で、米国の0・45、中国・ロシアの0・42、インドの0・37を大きく上回る。

結局、BRICsをどこまで真剣に受け止めるべきだろうか。

経済的な意味では、BRICsの台頭を歓迎すべきだ。もしロシアをインドネシアに置き換えれば、より意味を持つだろう。だが政治的な意味では、中国、インド、ロシアはアジアで覇権を争うライバルだ。しかも、ブラジルとインドは人民元の過小評価により被害を被っている。したがって、BRICsが同じ志を持つ真剣な政治組織へと進化することはないだろう。(週刊東洋経済2010年6月19日号)

Joseph S. Nye, Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。

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