デルタ株とワクチン接種、途上国は時間との戦い アジア開発銀行の浅川総裁に聞く「支援と課題」
――しかし、ワクチン不足はまだ続いています。支援はそれで十分ですか。
資金は確保したが、実際に買えるワクチンがないという状況だ。なぜなら、先進国が先に契約してワクチンを押さえてしまったからだ。欧米系のワクチンは特にそうだ。
ワクチンは公共財そのものであり、パンデミック(感染症の世界的流行)では、ある特定の地域や国だけがサバイブすることはできない。世界全体がワクチンを打たないと、パンデミックは収まらない。ワクチンナショナリズムは必ずしも望ましくない。
COVAXは、各国で購入できるワクチン量が人口の20%までと制限があるが、途上国にとっては、製薬会社との交渉やワクチンの調達・輸送・保管を代行してもらえるというメリットがある。交渉能力の向上で調達価格を安くできる可能性があり、調達・輸送・保管はすべてユニセフが代行し、何か問題が起きたときの責任体制にも透明性がある。アジア開発銀行は加盟国に信用力を供与する形でCOVAXと協働している。
アジアのワクチン生産への融資を検討
また、ワクチン供給そのものを増やすことが重要だ。そのため、加盟国であるインドやインドネシア、ベトナムの生産拠点の増強に向けて融資することなども検討している。
副反応への懸念からワクチン接種をためらう層はどの国にも一定程度存在する。たとえば、われわれの域内でもフィリピンは過去にデング熱のワクチンで悪い経験をしたことがあり、その傾向がある。副反応のリスクは示したうえで、それを上回るベネフィットがあることを、われわれも積極的に啓蒙していきたい。
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