アメリカ雇用完全復活でFRBの政策変更前倒しも ドル相場は例年になく底堅く、さらに上昇へ

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2021年の雇用回復を振り返ると、年初来7カ月間で月平均61.7万人の増加、過去3カ月間では月平均83.2万人の増加となる。ウォラー理事の「2カ月で160万~200万人の増加」は難易度の高い予想だが、非現実的とは言えない。今回、94万人の増加を果たしたので、8月分(9月3日発表)が70万人弱の増加でウォラー理事の想定が実現する。過去3カ月の増勢に照らせば、十分可能性はある。

前掲図に示すように、アメリカ経済の雇用が減少したのはコロナ禍の初期に相当する2020年3~4月および、感染第2波によりロックダウンが実施された2020年12月の計3カ月間だけだ。その前後の2020年10~12月や2021年1月は雇用の増勢こそ鈍っていたものの、減少したわけではなかった。こうした事実は7月に全米経済研究所(NBER)が今次後退局面の「谷」を2020年4月、すなわち後退局面は2020年3月と4月の2カ月間しかなかったという異例の判断を下したことと符合している。

あと1年で雇用は完全回復へ

下図は筆者が折に触れて参考にしている前回の後退局面との比較である。コロナショックを伴う今次局面とリーマンショックを伴う前回局面では雇用回復の軌道がまったく異なっているのが一目瞭然だ。景気の「山」から起算した雇用の喪失・復元幅は今回のほうが比較にならないほど大きい。

例えば、前回局面では雇用喪失のピークは2010年2月の869万人だった。まずそこまで悪化するのに26カ月かかっている。これに対し、今回は「山」から2カ月後が喪失のピークという異例の軌道を描いている。だから景気後退局面がわずか2カ月間と判定されたのだろう。急性的に悪化した今次局面と、慢性的に徐々に悪化していった前回局面との対比はあまりにも鮮明である。

ちなみに現在(2021年7月時点)は景気の「山」から起算して17カ月目に相当するが、上述したように雇用喪失は570万人まで圧縮されている。前回局面で17カ月目にはまだ692万人が喪失したままだったので、当時の回復軌道を明確に上回ったことになる。今後、月平均で50万人程度の増勢が続くと保守的に仮定しても、あと1年もあればコロナ禍で失われた雇用は完全に復元されることになる。

すなわち来年の今頃には景気の遅行系列である雇用の「量」という面から見ても「コロナが終わった」という状態になる。

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