「反中国」に太平洋諸国を引き込めなかった日本 太平洋島しょ国の最大の関心事は環境問題で中国ではない

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オンライン形式で行われた、日本と太平洋島しょ国・地域の首脳会議「太平洋・島サミット」で発言する菅義偉首相(写真・首相官邸、時事)

日本と太平洋地域16カ国・2地域の首脳による「太平洋・島サミット」(PALM9)が7月2日にオンラインで開かれた。菅義偉首相は「権威主義との競争など太平洋地域が新たな挑戦に直面している」と、「中国の脅威」へ団結を呼び掛けた。

首脳宣言は「法の支配に基づく自由で開かれた持続可能な海洋秩序の重要性」を盛り込んだが、島しょ国の関心は中国の脅威ではなく、海水面上昇や海洋ゴミ、核廃棄物など汚染物質対策に集中。福島第1原発の汚染水の海洋放出問題で、日本に強い懸念を表した。「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)に太平洋島しょ国を引き込もうとする日本の狙いは空回りし、双方の思惑の「すれ違い」が目立った。

第2列島線めぐり米中台が攻防

イギリス、フランス、ドイツなど西欧主要国が、空母や軍艦を相次いでインド洋や南シナ海に派遣し、アメリカ、日本と合同軍事演習へ――。日本外務省や防衛省が「得意げ」に発表する情報に接すると、中国包囲を狙うFOIPが、世界で大成果を挙げているかのような印象を持ってしまう。

では太平洋島しょ国は、日本にとってどのような存在なのか、国際政治の文脈から探ろう。菅政権は2月の日米豪印4カ国(クワッド=QUAD)外相会議で、FOIPが連携を強める地域として、(1)東南アジア諸国連合(ASEAN)、(2)欧州、(3)太平洋島しょ国、を挙げた。

国際政治が専門の櫻田淳・東洋学園大教授は、将来的には「台湾やパラオを含む太平洋島嶼諸国を『西方世界』共通の拠点にしていくという構想である。日本の西太平洋海域への関与もまた、こうした構想の文脈で考えられるべき」と主張している。

一方、中国は小笠原諸島からグアム、パプアニューギニアを結ぶ「第2列島線」を、対米防衛ラインとみて政治的・軍事的に重視する。習近平国家主席は2018年、パプアニューギニアを訪問した際、国交のある島しょ国8カ国を集め首脳会議を開いた。

アメリカ軍はマーシャル諸島にミサイル実験基地を置いているほか、アメリカのエスパー前国防長官は2020年8月、パラオで米軍基地の設置を提案した。パラオのウィップス大統領は2021年3月28日台湾を訪問した際、アメリカ政府は駐パラオ大使を同行させたほどだった。

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