縄張り越えた「観光列車レンタル」新潮流になるか 東急に続くか、オフシーズンに「他社貸し出し」
きっかけは、山形県酒田市在住のある農家の人との会話。鳥塚社長はトキ鉄の社長に就任する前は、千葉県の第三セクター、いすみ鉄道の社長を務めていたが、その農家の人が「自分は千葉県と結構行き来がある」という。庄内地方と千葉県では田植えや稲刈りの時期が違う。千葉県で田植えをしている時期、庄内地方ではまだ田植えが始まらない。
山形の農家は空いている農機具を千葉県の農家に貸し出し、田植えが終わったら、山形に戻してもらって田植えをするという。鳥塚社長はひらめいた。「これって、鉄道でも同じことができるんじゃないか?」
観光列車の場合、観光シーズンは席が埋まっても、通常期はガラガラということもある。もし、トキ鉄のオフシーズンがほかの鉄道会社にとっては観光シーズンであれば、季節を区切って貸し出すという手もある。
「九州で桜が満開になっても、こっちはまだ暇。だったら、桜前線に合わせて、九州、中国、本州、東北という順に雪月花を走らせたら面白いよね。逆に紅葉の季節には、東北から始まって、関東で走らせて、最後は京都とかね」
幸い、雪月花は電車ではなく自力走行が可能な気動車。軌間が同じ路線ならどこでも走れる。
「ロイヤルエクスプレス」が前例に
昨年、首都圏と伊豆を結ぶ東急の豪華観光列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤルエクスプレス)」が北海道を走った。同列車を使った旅行商品の企画と販売、さらに運行中の車内サービスは東急が行い、運転はJR北海道の運転士が担当する。JR北海道にとっても運行手数料収入が得られるというメリットがある。今年も8月13日から運行される予定だ。
もともとは2018年9月の北海道胆振東部地震で被災した北海道を鉄道で応援しようということでスタートした企画だが、そのコンセプトが鉄道の新たな可能性を切り開いた。
「その地域とまったく関係のない車両がその地域を走る。国がロイヤルエクスプレスで前例を作ってくれた」。
同じく北海道の観光復興支援企画としては、JR東日本が2019年夏にトロッコ型気動車「びゅうコースター風っ子」をJR北海道に貸し出した例もある。JR北海道はこの車両を観光列車「風っこ そうや」号として宗谷本線を運行した。
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