五輪の後…千葉・一宮町「祭のあと」に残ったもの サーフィン、五輪開催までの道のりは…
「ヒロト(大原選手)はいつも積極的に動いてくれました。五輪関連の活動への参加を頼むと“大丈夫、この日だったら参加できるよ”などと前向きなんです。性格的な面も大きいと思いますが、選手はみな五輪出場を目指して自分のことだけで精一杯のはずなのに、すごいなあと感心していました。一度も“えーっ?”と嫌がる素振りを見せることはありませんでした」
招致活動に携わったほか、啓発ポスターのモデルも務めた。筆者は視察取材時、プロサーファーの扱いが雑な森喜朗氏から「この坊や」と言われても受け流す大原選手を目の当たりにしている。さすがに周囲が見かねて「彼はナイスガイなんです」などとフォローを入れたものだった。
前出の鵜沢さんによると、率先して汗をかいてきた大原選手はよくこう言った。
「自分が動くことで五輪のサーフィンが盛り上がるならばそれでいい」
準々決勝をかけた3回戦。試合時間30分の残り1分、相手選手にリードを許していた大原選手は波から飛び出し、宙を舞う大技エアリバースを決めて大逆転。そのガッツポーズに町のサーファーらは歓喜した。
惜しくも準決勝進出を逃した後、大原選手は日の丸を振って仲間を応援し、メダリストに駆け寄って日の丸を肩にかけた。
「仲間を気遣う姿勢に感動した。同じサーファーとしてうれしかった」
と40代の男性サーファー。
心配なのは事故やマナー
五輪が通り過ぎて町はどう変わるのか。
一宮町のサーフショップ代表は言う。
「荒々しい波に挑む選手を見て、サーフィンをしない人も“迫力がすごかった”と興奮していました。五輪採用が決まってからスクールの申し込みは増えており、よりポピュラー化が進むのではないか。
ただ、自然を相手にするスポーツなので海難事故を防ぐためにも専門店などで正しい知識やレクチャーを受けてからトライしてほしい。不確かなネット情報をうのみにして、考えられない悪条件下で海に入る子もいますから。もうひとつ心配なのはマナー。飲み食いしてゴミを散らかしていくサーファーにはならないでください」
同店では月1回、スタッフ総出で海岸のゴミ拾いをしているという。