大手邦銀はストレス環境から脱却も、バランスシートに対する収益性の低さなど課題は残る《ムーディーズの業界分析》

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 加えて、日本航空など大企業のデフォルトが発生したにもかかわらず、同年度中に信用コストは大幅に減少した。大手銀行の業務純益に対する信用コストの比率は、08年度の約70%から、09 年度には約40%に低下した。

これは主に、大企業のデフォルト件数が極めて少なく、企業倒産や中小企業のデフォルトの件数も着実に低下したことによるものである。たとえば、中小企業のデフォルト件数は、この期間、すべてのセクターで大幅に減少した。これは政府による多額の緊急保証制度や、政府系金融機関(商工組合中央金庫、日本政策金融公庫等)の利用によるものといえる。

さらに、銀行からの継続的な流動性支援を背景とした、体力の弱い中小企業の債権に対する不良債権の定義の緩和も、中小企業の企業デフォルト率の低下につながった。

しかしながら、一方で、09年度の改善にもかかわらず、邦銀が直面する根本的な課題は変わらず残っている。株式、金利、信用リスクにおける予想外のストレスに対する抵抗力は非常に弱く、バランスシートに対する業務の収益性は依然として低い。最近の資本増強によって資本のクッションは厚みを増したものの、この収益性の問題はさらに悪化するだろう。

また、各行の、消費者金融などの非銀行業務への参入といった現行のビジネスモデルは、収益改善でなく、グループの連結ベースの収益低下を招く結果となっている。最近の資本増強から、各行は、日本以外のアジア市場への資本配分を計画しているとみられる。しかし、こうした地域への投資は、邦銀がこの領域で持続的な基盤を確立する能力が未知数であるだけに、さまざまなリスクを伴う。

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