株式市場で「カモになる人」「ならない人」の差 市場には牛が10%、熊が10%、カモが80%いる

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投資の失敗例として多いのは、銀行や証券会社の言いなりになってしまったり、複数の投資家の意見を取り入れようとしたりして、自分のスタイルや最終的なゴールを見失うこと。

「信念を持たないで人の言うことに左右されてしまう人は結果的にカモになる。株式市場でエサにされてしまう」と、藤野氏は指摘する。

「絶対に損をしない金融商品」は存在しない

株式市場では誰もが必ず損をする、と藤野氏は言う。なぜなら永久に右肩上がりの商品は存在せず、どんな商品にも必ず下がる瞬間があるからだ。

「『下がらない商品』と謳っているものには必ずインチキがある。株価の下落をどう受け止めるかは投資をするうえでとても大事。株価が上がったり下がったりすることは人間の呼吸と一緒で、ごく自然なことだ」

そもそも株価は需要(買い手)と供給(売り手)のバランスで決まり、需要が供給を上回れば株価は上がり、下回れば株価は下がる。売り手と買い手の希望が一致する価格はどこか、その企業の本当の価格はいくらかをずっと探求し続けているのが投資家である、と藤野氏は語る。

とはいえ、損をする瞬間をなるべく減らしたいというのが多くの人の本音だろう。そこで肝心なのは、企業や商品の「本質的価値」を見極めることだ。

「長い目で見て価値が上がるということは、本質的に価値があるものだということ。物事の本質を見極める目が養われたら、結果的に大きな利益を上げられるようになるだろう」

例えば、コロナ禍でオンライン需要が増えた......などのような、誰もが思いつくものではなく、より深い視点で考える必要があるということだ。

人の意見に惑わされない確固たる信念、物事の本質を見る目、短期的な株価の変動に慌てない平常心。投資家である前に1人の人間としてゆたかな心を育むことが、遠回りのように見えて近道なのかもしれない。

(構成・酒井理恵)

藤野英人/レオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)。1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)など。
「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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