五輪後の日本株は意外にも上昇する可能性がある 菅政権が注力すべきシンプルな「2つの課題」

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筆者はやや期待を込めている部分もあるが、今後の日本の政治情勢について以下の展開を予想している。まず、世論の風向きだが、先に述べたように多くの国民が複雑な感情を抱くなかでオリンピックが開催されるが、盛り上がりに欠けるとの声も多く事前の期待値は低いだろう。

だが実際にはオリンピックが始まれば、テレビなどは日本人選手を中心とした活躍を大きく伝えるので、これまでのオリンピック同様に相応に盛り上がるのではないか。すると、多くの国民が抱く釈然としない感情は、今後、当初の想定よりも容易に払拭されうる。

菅政権は新型コロナやオリンピック対応で迷走している部分もあるが、内閣支持率は新型コロナ感染動向に大きく連動している部分が大きい。菅政権が注力するワクチン接種は他の先進国並みのペースにしっかり速まってきているし、緊急事態宣言など経済活動制限の効果もあり、新型コロナ感染者数は秋口にかけて落ち着くだろう。

2021年末頃から日本経済が急回復する条件がそろう

結局、菅政権が注力する、「オリンピックというイベントを無事終わらせる」「ワクチン接種を進める」という2つの課題をクリアすれば良い。これらが高いハードルであるかと言えば、筆者にはそうは見えない。このため、オリンピックにおいて、テロ発生などのかなりの想定外の出来事が起こらなければ、総選挙が近づく秋口にかけて経済活動の正常化期待が高まると予想される。

また、オリンピックが多くの会場で無観客試合となったことが、経済活動の下押し効果を懸念する声もある。だが無観客試合のチケットが払い戻しされるだけなら、数百億円程度でマクロ的には影響はほぼない。もちろん、首都圏を中心に7月から経済活動制限が強化されたため、これによる経済的な下押し効果は続いている。また、これまで飲食店などの営業自粛に対する協力金が、東京都などから迅速に支給されなかったという対応の不手際が目立っていた。

それでも7月以降については、先払いで飲食店への協力金支払いが行われ始めており、政府・自治体の対応は改善する方向にある。今後こうした対応を続けるなかで、秋口以降期待できる経済活動の本格化とともに、これまで執行されなかった財源を必要な歳出に回すなどで、効果的に大規模な財政政策を発動する余地がある。

最終的には、官邸の判断次第ではあるが、財政政策の発動が経済正常化を後押しすれば、春先から夏場にかけてアメリカで見られた経済活動の急回復が、日本でも2021年末頃から始まるだろう。

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