五輪後の日本株は意外にも上昇する可能性がある 菅政権が注力すべきシンプルな「2つの課題」

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新型コロナが収束に向かえば、どの程度経済成長率は高まるか?日本人による国内旅行消費(2019年)は約21.8兆円(GDP比約4%)である。新型コロナで国内旅行消費は大きく落ち込んでおり、2020年4~6月以降の1年間では旅行消費は約8.3兆円へと半分以下に落ち込んでおり、この需要喪失はGDPの約2.5%に相当する。

政府が目指すとおりに、今年の年末までにワクチン接種が進めば、抑制されていた日本人の旅行消費がかなり顕在化すると見られる。やや楽観的だが、2022年内に2019年の水準まで国内旅行消費が戻るとすれば、GDP成長率を約2%程度押し上げる効果が期待される。また、この需要顕在化は新型コロナ収束によって自然に発生するので、「Go Toトラベル」などの旅行需要刺激策は、現在想定されている予算で十分だろう。

2022年の日本経済急回復シナリオにこれだけの根拠

また、2022年に新型コロナリスクが低下すれば、現在ほとんど蒸発している海外からの訪日客の増加にも期待できる。新型コロナ禍前の海外旅行者による消費金額(2019年)は4.8兆円である(GDP比約1%)。もちろん、国内旅行消費ほど早期に海外旅行者が増える可能性は低いので、訪日外国人への大きな期待は難しい。それでも、訪日外国人が2019年の半分程度まで戻るだけで約2兆円の消費需要が現れる。

これらの旅行需要が顕在化することに加えて、営業自粛を余儀なくされていた外食やレジャーなどの産業の売り上げも、国内旅行消費と同様に2022年にはかなり正常化するだろう。これらのサービス消費が増える時には、同時に他の消費需要が減るので、旅行需要などの顕在化が全てGDPの押し上げ効果にはならない。ただ、ワクチン接種が菅政権の想定する通りに進めば、2022年の日本経済の成長率はかなり高まるだろう。

オリンピック後に菅政権が存続する政治情勢となり、上記のシナリオへの期待が強まるなかで、これまでの日本株の出遅れのかなりの部分が解消されると筆者は予想している。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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