糖尿病を「太っている人の病気」と信じる人の盲点 知らぬ間に進行している「かくれ高血糖」の恐怖

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血管の壁の内側の細胞を、糖分の多い液体と糖分の少ない液体にかわるがわるつけて、血糖値スパイクが繰り返し起きている状態を人工的につくると、細胞のなかで活性酸素が大量に発生するということを、イタリアの研究グループが明らかにしたのです。この活性酸素ですが、よく「老化の元凶」と言われているのをご存じですか?

活性酸素は、呼吸で取り込まれた酸素が体内で活用される過程で発生するものなので、呼吸をしている限り、誰の体のなかでも必ずできます。なおかつ、活性酸素はふつうの酸素よりも物を燃やす力がパワーアップしているので、細菌やウイルスを撃退してくれるなど、免疫機能の一部としても働いています。

つまり、ある程度の量であれば体を守るために働いてくれる。ところが、増えすぎるとパワーを持て余して、正常な細胞まで傷つけてしまうのです。それが、老化の元凶といわれる所以です。

間違っていた糖尿病指導

さて、血管の内側で活性酸素が大量発生していたらどうなるのでしょうか?

まず「血管内皮」という血管のいちばん内側を覆っている膜が傷つけられます。その度に、傷ついた部分を修復するために免疫細胞が集まってきて、血管の壁に入り込み、やがて壁が分厚くなって弾力性を失ったり、血液の通り道が狭くなったりしてしまう。そうやって血管のいたるところで動脈硬化が進んでしまうのです。

さきほど紹介したグラフのように、食後2〜3時間だけ血糖値が急上昇・急降下する状態(血糖値スパイク)は、これまでは「糖尿病予備軍」とか「糖尿病の前段階」と言われていました。そして、「このままだと糖尿病になるから気をつけてくださいね」という指導が行われてきました。

つまり、「いまはまだセーフだけれど、このままだと糖尿病になるから危ないよ」という指導だったわけです。

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