豪雨災害を河川と下水道の整備だけで防げない訳 人々の暮らしを守りながらの「流域治水」が必要だ
しかし、今になってその期待を果たすことに困難が見えてきたのです。河川事業も下水道事業も奮闘しているものの、都市開発の速度や規模が大きくなり、また、雨の降り方などが変わって、豪雨が頻発するようになりました。河川法、下水道法による整備・管理がどれだけ力を入れても、限界が見えてきたということなのです。
そこで「流域治水」です。流域生態系が提供できるさまざまな治水効果、河川整備や下水道整備とは別の工夫で進めることができる多様多彩な治水の工夫を、現代の視点からあらためて総合的に活用する。河川、下水道の努力を応援し、流域生態系のあらゆる機能をあらためて利用、応用して流域全体の工夫で豪雨時代の治水を進めてゆく。それが2020年7月にスタートした「流域治水」です。
どこが氾濫しそうか流域生態系全体で考える
「流域治水」を理解するためには、個々の機能に集中するのではなく、流域生態系全体を思い浮かべながら、視覚的に考えることが重要です。
初級の段階では、紙に書いたモデルの流域を思い浮かべるほかありませんが、慣れてきたら足元の川の流域などを対象として、繰り返し、空想で雨を降らせて考えてみることをおすすめします。
図に示す流域地形で考えます。雨の水を集めてA水系をつくる流域です。上流、中流流域は丘陵、下流は縄文時代には海だった低地(沖積低地)とします。流域の形は単純な短冊形に近いとしましょう。この流域全体に大きな雨が降り続いている状況をイメージしてください。
(外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
流域の上中部に降った雨は流水となって合流し、斜面を下って低地へ辿り着き、次第に減速します。雨が強ければ、低地の緩やかな流れでは海への排水が速やかには進まず、洪水(大雨の時の川の水)は下流域で平常時の川幅を越えて広がり、氾濫状態(外水氾濫)となるでしょう。
低地に降って川に排水できずにいる雨水のことを内水といいます。流域が豪雨に襲われている場合は、排水機能が限界に達して内水もまた氾濫していると考えられるので、下流周囲の低地は、内水と外水の合わさった大氾濫になる可能性があります。
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