日銀総裁人事をめぐる国会攻防の裏側 混迷
日本銀行の総裁人事をめぐる攻防は結局、19日の任期切れまでには決着しなかった。問題をこじらせた背景には、なりふり構わず天下り先確保に走る財務省の存在もある。
3月18日夕方、日本銀行幹部の一人は白分に言い聞かせるようにつぶやいた。「とにかく、現場がしっかりしないといけない」。気持ちは痛いほどわかる。経済危機がグローバル規模で加速度的に進行する局面にあって、総裁が空席という異常事態が避けられなくなったのだ。
日銀の正副総裁は国会の同意を得て政府が任命する。ところが、それまで提示を出し渋っていた政府が3月初旬に明らかにした侯補者に、民主党はじめ野党は一斉反発。総裁候補の武藤敏郎・日銀副総裁と、副総裁候補の一人、伊藤隆敏・東京大学教授については、12日の参議院で同意が得られず、元日銀理事の白川方明・京都大学教授の副総裁就任だけが事実上決定した。
民主党が武藤副総裁の総裁昇格に反対したのは「金融・財政の分離に反する」などの理由からだった。世界経済が動揺する中、「日銀上層部の継続性は重要」との認識を深めていた財界などは一斉に民主党の動きを批判した。が、同党は姿勢を崩さなかった。
財務省が根回し
政府は次善の策に乗り出す。17日、民主党に対して、福井俊彦総裁、武藤副総裁両名の任期延長という案を非公式に打診。が、「福井総裁による村上ファンドへの出資問題は遺憾」と主張してきた民主党は任期延長を一蹴。人事は振り出しに戻っていた。