セガサミーが「脇役」に?横浜カジノで静かな異変 事業者公募に名乗り、でも過半出資方針は撤回

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およそ1年前には、競合と目されていた外資大手がコロナ禍で横浜IRから撤退するとのニュースが出たことなどを受け、「IRに関しては(コロナ影響による)メリットも出てきている」とも言ってのけた里見社長。しかし昨年秋の決算説明会で「参入条件などは慎重に見極めていきたい」と発言して以降、IRについて積極的な発信はみられず、徐々にトーンダウンする雰囲気を漂わせてきた。

要因の1つは、国内IRの投資対効果の低さにある。

日本のIRは国や自治体が事業者から徴収する納付金が高額で、「うまみがない」(海外IR企業幹部)とされてきた。この条件の下、国際会議場やホテルなど行政が要望する規模の施設を整備すると、「収益ドライバーのカジノがあるにもかかわらず、回収(までの時間)が随分かかる」(里見社長)のだ。

ただ、これは関係者にとって従前から周知の事実。今となって弱腰に転じた背景には、セガサミーにおける事業の優先順位が変化した影響も見逃せない。

ゲーム分野の育成が急務に

同社の収益柱だったパチスロ・パチンコ機の販売は、ギャンブル抑制に向けた規則改正やコロナ影響によるホールの客数減によって低迷。前2021年3月期の遊技機事業は、サミーとセガが経営統合した2004年以降、初の営業赤字に転落した。中期的にも、遊技機市場は縮小が濃厚と目されている。

一方、ゲームソフトを柱とするエンタテインメントコンテンツ事業は、巣ごもり消費によって2021年3月期の営業利益が279億円(前期比69%増)に拡大。ゲーム市場の成長展望もあり、同事業を遊技機に代わる看板事業へ育成することが急務となった。

実際、今年5月の決算説明会でセガサミーは、ゲーム分野に今後5年で1000億円規模の投資を行う中期経営計画を発表している。

説明会では、横浜のIR運営にマイノリティ出資で参画する方針を決めたことも明かしていた。投資家から方針を転換した理由を問われた里見社長は、「他の事業にも大きく投資していきたい状況であることに鑑みた」と回答。これが横浜のIRに対する本音だろう。

コロナ禍ではゲームセンター子会社の売却にも踏み切ったセガサミー。事業の選択と集中が進む中、拡大を目指してきた国内IR事業の方向性も今後焦点となる。チャンスだったはずの横浜で「脇役」を選んだ以上、事業の具体的展望を改めて整理する必要がありそうだ。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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