単線でも急成長「アーバンパークライン」の潜在力 "しょうゆの町"野田市周辺、通勤路線へ大変貌

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野田市駅から愛宕駅にかけての高架化は、線路こそ空中に持ち上がったが工事はまだ続く。つまりは地上にあった古い線路を引っ剥がして更地にする工事だ。線路が地上から空中に上がると、それまで地上にあった踏切は無用の長物になる。愛宕駅の近くにはそんな“廃踏切”も残っていて、こちらは鉄道ファンにとっての見どころ、というところだろうか。

高架化の廃止になった踏切を境にして、奥はすでにレールがなく、手前はレールが残る(撮影:鼠入昌史)

鉄道ファンにとって注目のポイントは、まだ先にもある。アーバンパークラインは、単線と複線の区間が入り交じっているところに特徴がある。全体でいうと、春日部―運河間の18.0kmが単線区間。それ以外の44.7kmが複線区間だ。つまり、野田市駅や愛宕駅を含む高架区間は単線、ということになる。川間―南桜井間でアーバンパークラインは江戸川を渡るが、その橋梁も単線である。

ところが、単線区間の存在は沿線がパークからアーバンへと生まれ変わって増えてきた通勤のお客をさばくためにはやっかいだ。そこで、南桜井駅や梅郷駅では駅構内をぐーっと延ばし、事実上の複線区間を設けている。これによって、対向列車が駅に到着するのを待って行き違いをする必要がなくなり、運転本数を増やすことができる、というあんばいだ。

「東がパークで西がアーバン」な駅

ところで、野田市駅と愛宕駅から柏駅管区の端っこ・藤の牛島駅までの駅の中にもちょっとした見どころがあるという。教えてくれたのは七光台駅長の竹倉義人さん。

七光台駅の跨線橋から。線路の左(西)側が住宅地、右側は緑が生い茂る(撮影:鼠入昌史)

「七光台の駅の東側と西側のコントラストですね。西側には新しい住宅地が広がっていて、子どもたちも多い。でも、反対の東側は森なんです。森というか湿地帯、底なし沼、なんていう人もいます。ウグイスが鳴いたり、夏にはカブトムシやクワガタを駅のホームでも見かけることができますよ」

もとは西側も沼地で、住宅地の開発には相当手間取ったというエピソードもある七光台駅。訪れてみると、確かに東西のコントラストは圧倒的だ。東側はほんとうに何もなくて木々が生い茂るばかり。西側は立派なニュータウン。東がパークで西がアーバン。まさしくザ・アーバンパークライン。

野田というしょうゆの町からはじまった東武野田線の歩み。それは、100年以上経ってしょうゆの輸送といういかにも野田らしい役割から、沿線の宅地化によって通勤路線へと変わってきた。アーバンパークラインは、町と鉄路の変遷を物語る、そんな愛称なのである。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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