そして流山おおたかの森から急行で1駅、運河駅はすぐ近くを流れる利根運河を渡った先に東京理科大学のキャンパスがある学生の駅。利根運河は江戸川と利根川を結ぶ運河で、しょうゆの輸送には大いに貢献したという。
この運河駅をはじめとするいくつかの駅と住宅地の中を抜け、野田市駅にたどり着く。野田市駅付近は高架化工事の真っただ中。すでに線路は空中へと持ち上げられていて、周囲を見渡すことができる場所にホームがある。ホームから見えるのは、もちろんキッコーマンの工場だ。
高架下には立派な駅舎が目下建設中。建設中なので、改札口は仮のもの。小さな駅舎を抜けて外に出る。駅前広場も工事中のようで、トラックがひっきりなしに行き交うような道を抜けて少しだけ野田市駅の周りを歩く。
古い商店やホテルのようなものもあって、古き野田市駅前の風景がかすかに残る。キッコーマンの工場の目の前からアーバンパークラインの線路に向かってまっすぐに駐輪場が連なっているが、これがかつてしょうゆを運んでいた線路の跡だ。
「野田市の駅前に来ますとね、日によるんですけどしょうゆの独特な香りがこう、ふわーっと漂ってきましてね。まさにしょうゆの町なんだなあと思いますね」
こう話してくれたのは、柏管区で野田市駅長を務める佐藤修一さん。
キッコーマンと東武の町
「昔は駅に側線もたくさんあって、しょうゆの輸送基地にみたいになっていたんです。東武鉄道の職員も多く暮らしていまして、野田市といったらキッコーマンか東武鉄道か、と言われたくらいで。あとは野田市の名物でいいますと、ホワイト餃子っていう名物もあるんです」(佐藤さん)
ホワイト餃子は千葉県民の(というか野田市民の?)ソウルフード。本店は野田市駅……ではなく、お隣の愛宕駅から歩いて15分ほどの場所にある。
「愛宕駅もしょうゆの駅なんです。こちらはキッコーマンではなくてキノエネ醤油。この駅も今年の3月に高架の新駅舎ができたばかりです。昔、しょうゆは高瀬舟で運ばれていたので、愛宕駅の新駅舎は船の帆をイメージしたデザインにしています」(佐藤さん)
野田のしょうゆ運搬は、古くは江戸川や利根川、利根運河をゆく高瀬舟。それが鉄道の時代になっていまのアーバンパークラインで運ばれるようになり、それから変わってクルマの時代へ。そんな移り変わりが、愛宕駅の真新しい駅舎に刻まれている。
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