京都鉄博、ファンの心をつかむ「お家芸」の熟練度 引込線で「レア企画」連発、リピーター囲い込み

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丹後くろまつ号に関しては保安装置の関係で自走してJR線に乗り入れられないため、福知山駅でDD51形ディーゼル機関車と連結して運ばれてきたという。企画を担当したJR西日本鉄道文化推進室の川口穂高さんは今後について「安全を最優先に、当館でしかできない車両展示をJRグループ内外問わず、関係箇所と協力して実施できれば」と強調する。「今回のような特別な搬入作業の経験を積んで技術の継承につなげていく」という。

広報担当者も「常設展示に加え、生きた展示の博物館として、引込線を使って実際に走っている車両を間近で見学できる企画を“お家芸”としてアピールしていきたい」と、これからも積極的に特別展示を実施していく考えだ。

8月が最後の展示となる配給車。トラックのような荷台が特徴だ(記者撮影)

その言葉通り、京都鉄博は7月13日、工場から車両基地へ部品を運ぶクル144・クモル145配給車を8月6日から8月18日まで展示すると発表した。今年度中の引退が決定しているため、今回の展示が一般向けには最終展示となる。

展示にあたっては、入館券に5分間車両を貸し切って運転台・荷台などをじっくり見学できる特典を付けたチケットを販売する。入線シーンの公開にとどまらず、荷台からの配給物の積み下ろしや行先表示の幕回しなど関連イベントも盛りだくさんに用意する。

今後のレア企画の展開は?

新型コロナへの警戒が続く6月14日、博物館を実際に運営する人材の面でも動きがあった。広島に本社がある中国ジェイアールバスの社長を務めた前田昌裕さんが京都鉄博の2代目館長に就任。梅小路蒸気機関車館時代から博物館を牽引してきた三浦英之初代館長からバトンを引き継いだ。

前田館長は就任後初のイベントとなった「〇〇のはなし」と「丹後くろまつ号」の入線について「エリアも会社も違って普段並ぶことがない車両が隣同士になり、非常に多くの来場者によろこんでもらえる展示ができた。営業中の列車を借りてくるにはJRの内外で調整が必要だが、こうした企画を今後も考えていきたい」と語った。

各地で活躍する車両を入線させる“レア企画”で、開館から5年が経過したいまでも、ファンを引き寄せる工夫を続ける京都鉄博。前田館長は「一応ここは鉄道博物館なので……」と遠慮がちだが、いずれ館長自らの経験を生かした「バスとのコラボ企画」によって、熱心なファンであるリピーターの増加につながる展開がみられるかもしれない。

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