ナイロビ新幹線を中国企業が受注した驚愕の理由 中国の対アフリカ輸出額10兆円、居住者100万人

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中国の投資も無条件ではありません。有名な条件は、「台湾を国として認めるな」というものです。以前、アフリカには、台湾と国交を結んでいた国が10カ国以上ありましたが、今は1カ国(2020年時点)しかありません。

直接投資によるパッケージディール

中国は今、アフリカでも「一帯一路」の一環として次々に大型インフラ開発を進めています。高速鉄道や高速自動車、ジブチには大型港湾施設も作っています。ケニアの高速鉄道の建設を担ったのも中国です。

先進国の途上国への援助や投資には先にも書いた多くのルールがありますが、中国のやり方は異なります。最初にインフラを敷設するプロジェクトとして受注してしまうのです。援助ではなく「直接投資によるパッケージディール」です。

高速鉄道であれば、中国の車両・レール・運行システム・メンテナンスなど、すべてがパッケージで契約されます。それから資金調達です。これも、中国輸出入銀行などの金融機関が大半を融資しているようです。

個別プロジェクトに対する融資という形です。実際、中国は援助やODAとは言いません。通常のプロジェクトファイナンスとして実施するのです。

ナイロビ新幹線(Standard Gauge Railway)は、約3500億円のプロジェクトですが、8割以上が中国からの融資です。そして、そのうちの多くは中国の車両、レール、システム、中国ゼネコンの工事代金などとして支払われます。もちろん、ローカル企業やローカルワーカーにもお金は落ちますが、過半は中国企業が受注している。

そしてナイロビ新幹線に限らず、中国のアフリカでのインフラ投資の問題になっているのが、返済できなかったらどうなるか、です。元本を払えなくなったら、関連する土地の長期間租借、といった契約が取り交わされている実例が他であるからです。

最近は「債務の罠」として有名になり、アフリカ各国も警戒をするようになってきています。もともとイギリスやフランスなどの植民地だったのです。債務免除や新型コロナの影響で返済猶予、政変によって踏み倒し、などの債務については今後も丁々発止のやりとりが続くでしょう。

新幹線といえば、本家本元は日本。実はナイロビ新幹線も簡易に試算したことがあるそうです。日本の新幹線だと、総工費で約1兆円、工事期間6年以上、日本からのファイナンスは最大5割程度。一方、中国は総工費約3500億円、工事期間3.5年、ファイナンスは8割以上。

この条件だと、勝ち目はありません。日本は最速250kmで、毎5分で運行できて、事故がなく安全。でも高い。そこまでのスペックはまだいらない。

新幹線といいましたが、正確には標準軌道(SGR/Standard Gauge Railway)です。最高時速は170km、平均時速120kmです。特急に近いと思います。客車は1日上下4~6本程度で、あとは貨物車が運行します。

実は、客車よりもこの貨物車が重要で、東アフリカの物流改革のカギになる可能性があります。今後、ウガンダの首都カンパラや、ルワンダの首都キガリ、ブルンジの首都ブジュンブラまで、ナイロビから一本でひかれる計画になっています。

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