言論弾圧だけじゃない「香港統制強化」隠れた課題 軍艦の補給や休養ができる代替港探しが急務に
また、国安法制定1周年を控えた2021年6月25日、中国国務院は、香港特別区行政府のナンバー2である政務司長に李家超公安局長が昇格したことを公表した。公安局長は香港の警察や入管など治安行政のトップであるが、李氏は英国植民地時代に香港警察に入った生粋の警察官僚だ。政務司長に就任したことで、次期行政長官の有力候補となったとの報道もある。
警察官僚が行政のトップになることが必ずしも香港の警察都市化を意味するものではないが、李氏が国安法公布前後の香港警察を指揮していたという事実もまた消去することのできない事実だ。香港では「武官治港(警察が香港を統治する)」との論評もある。
大陸本土の中国人民にとって、今日の香港は、警察によって統治された大陸本土以上に自由を制限された地域であり、新たな意味での「一国二制度」であるといえるのかもしれない。
世界各国からの軍艦の訪問を受け入れているが…
では今後どうなるのか。近年の中国は、軍艦の相互訪問などの軍事外交を重要な外交手段として活用しており、青島(海軍北海艦隊基地、山東省)、上海(海軍東海艦隊基地)、湛江(海軍南海艦隊基地、広東省)などの軍港に世界各国から軍艦の訪問を受け入れている。
海上自衛隊の護衛艦も湛江や青島を訪問し、人民解放軍将兵や市民の盛大な歓迎を受けたことがある。2021年後半にはドイツ海軍が日本訪問を計画しており、その際に中国にも寄港する計画があることが報じられている。
中国が今後、再び香港への外国軍艦の訪問を歓迎するようになることは十分にありうる。しかし、国安法が規定する犯罪行為が具体的に何を意味するのかが明確でない限り、外国軍人と交流することは香港市民にとってリスクであり、これまでのような草の根レベルの市民と乗組員との交流は期待できそうにない。そうしたこれまでと異なる香港は、軍艦の乗組員にとってもエキゾチックな中国文化の窓口とはいかないだろう。
インド太平洋が世界規模で関心を集める近年、とくに2021年は欧州諸国が軍艦をこの周辺海域に派遣することが公表され、すでにフランス海軍が活動を始めており、イギリスの空母クイーン・エリザベスも母港を出港し太平洋に向け航行中である。今後ますますこの周辺で活動する欧米諸国の軍艦は増える可能性があるだろう。
長期間にわたって洋上で活動する船舶、特に軍艦にとって、燃料や食料の補給、船体や装備品の整備、乗組員の休養などのため港湾への寄港が必要であることはこれからも変わらない。
香港がその期待に応えられなくなったとすれば、その周辺地域で香港を代替する港湾が必要となる。港湾であればどこでも良いというものではない。空母を含む複数の軍艦の補給や整備に対応し、乗組員を温かく迎え入れてくれる港町は限られている。
※本論で述べている見解は、執筆者個人のものであり、所属する組織を代表するものではない。
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