身体の不安を減らし、身体を心地よくすること。あるいは身体の可能性を引き出し、身体の価値を高めることが、未来を切り拓くための最も大切な「資源開発」と化すのである。FX、投資信託、外貨預金などといった資産運用と同様に、健康という資産の最大化を目指す「身体運用」が必須となる。
脳や神経系統、筋肉、胃腸などの臓器、細菌類までが、このようなロジックに基づいて再編成されるのである。また、何か1つの分野に特化して身体の最適化を図ろうとする傾向があるのは、企業も個人も総じて効率的に潜在能力を掘り起こす必要性に駆られているからだ。
例えば、世界トップクラスのアスリートなどの睡眠管理を行ってきた「スポーツ睡眠コーチ」のニック・リトルヘイルズは、「私のメソッドを生活に取り入れた人は、私にも本人の目にも明らかな、大幅な改善がみられる。気分がよくなり、回復力が高まり、そして何よりも大切なパフォーマンスのレベルが向上する」(『世界最高のスリープコーチが教える 究極の睡眠術』鹿田昌美訳、ダイヤモンド社)と言う。
筋トレと自己啓発的な効果を結び付けた言説
セルフケア、セルフコントロール関連の書籍の多くが宣伝文句に「最高のパフォーマンス」と付言しているのは、脳や神経系統、筋肉、胃腸などの臓器といったものを掌握し、活性化することに、人生を成功に導くカギがあるとの考えがあるからだ。事実、ここ10年だけでも筋トレと自己啓発的な効果を結び付けた言説が少なくない。先述の『THE EAT』では、「仕事の活力もみなぎって」「年収は1年で2倍になりました」という40代の実践者の声を紹介している。
その昔、成功法則といえば、引き寄せの法則などニューエイジ的なものが定番だったが、健康の科学が政治においても経済においても支配的になるに従って、筋トレ、食事、睡眠、瞑想……といったより身体的なものにフェーズが移ったのである。
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