マック、カサノバ体制の"賞味期限"はいかに 客数減にチキン・ショックで通期予想は「未定」

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今村執行役員は通期決算について「合理的に見積もることができない」と説明した

今村朗執行役員は「当社にとって大変な状況はしばらく継続する。また、上海福喜の問題で売上高の減少が予想される。お客様の信頼を回復するための費用が増加することもあり、合理的に見積もることができない」と理解を求めた。マクドナルドにとって、今回の“チキン・ショック”はまさに、泣きっ面に蜂だったわけだ。

とはいえ、昨年8月に発足したカサノバ体制が順調に成果を出していれば、今回のダメージもそこまで深刻ではなかったかもしれない。

会見の席でカサノバ社長は「上半期に進めてきた戦略は正しい」と強調した。アボカドバーガーやビッグブレックファストに加えて、「ハッピーセット」の刷新やデリバリー導入店舗の拡大などが好評だった、というのがその理由だ。

カサノバ体制の正念場

ただし、実績を振り返ると、カサノバ社長の自信とは正反対の状況が見て取れる。既存店売上高は1月こそ前年同月比3.4%増となったものの、2月以降は前年割れが続く。特に深刻なのが客数で、昨年5月から14カ月連続で前年同月を下回っている。

上海福喜の問題が明らかになってから、既存店の売上高は「計画に対し、15~20%落ちている」(今村執行役員)。消費者からの信頼回復に向けて、マクドナルドはチキン商品を全量、タイ製に切り替えた。また、原材料の最終加工国などの情報公開、一部サプライヤーへの臨時追加監査と毎月の現場確認、一部製品の日本国内における品質検査頻度の向上などの対策も新たに掲げた。

それでも、「(どのくらい影響が続くのか)読めない。数十億円規模の損失が出てもおかしくない」(今村執行役員)。質疑応答の中盤から、カサノバ社長はメモを片手に同じような言動を繰り返すばかり。終盤は、カサノバ社長に代わって、今村執行役員と調達担当の菱沼秀仁・日本マクドナルド取締役が交互に報道陣からの質問に対応していた。

事業会社である日本マクドナルドの社長に就任してから、まもなく1年。チキン・ショックの影響を早期に払拭できなければ、カサノバ体制の“賞味期限”にも支障が出かねない。

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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