NHK幹部が語った「31歳記者過労死」非公表の裏側 なぜ4年もの間、公表されなかったのか

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翌年5月、NHK物故者追悼式があった。当時NHKの会長だった籾井勝人氏は、2019年秋の筆者の取材にこう答えた。

「僕が佐戸さんのことを最初に知ったのは追悼式の名簿ですよ。その名簿を見ていたら一人若い女性がいたので、『これはどういうことだ』と職員に聞いたら、『心不全で亡くなりました。いま労災をやっています』と。僕が気づくまで誰も何も言ってくれないんだ。そしてしばらくしたら、『労災が下りました』と(職員から報告があった)。『それはよかったね』というところで僕は終わっている」

「遺族、公表を望まず」の真相は

佐戸記者の過労死の公表時、メディアから公表が遅れたことについて問われたNHKは、一様にこう伝えていた。

「遺族の側から公表を望まないとの意向を示されていたので、公表を控えていた」(朝日新聞)。

国会で働き方改革が議論された頃を振り返り、あるNHK記者はこんな証言をした。

「働き方改革の断行に向け、政府は(社員の高橋まつりさんが過労自殺した)電通をある種、見せしめにしました。でも、本当は佐戸記者のことでうち(NHK)が狙われていた、と先輩記者から聞いていました。『(佐戸記者の)ご両親があまり騒ぎにしてほしくないらしいということで、やられずに済んだ』と」

過労死公表の直前、佐戸記者と親しかった職員たちは、両親にこう訴えた。

「(NHKの)局内で未和さんの(過労死の)ことはほとんど知られていません。新入社員は全く知らないと思います」

「高橋まつりさんの残業時間は知っていても、未和さんがどれほど残業していたのか、私たちにも知らされていません」

「きちんと知らせるべきだと言っても、組織として動かないんです。自分たちも残念に思っています」

次ページその一端を知る手がかりが届いた
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