無観客提言の分科会委員語る「五輪中止の現実味」 感染症の専門家として訴えたいことの本質

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現状では、東京オリンピック期間中も緊急事態宣言が発出されていることになる見込みだ。大会組織委員会は、政府の対応をみてから、IOC(国際オリンピック委員会)などとの5者協議で無観客も検討するとしている。

その時点で有観客が決まったとしても、それが例示された大阪のような状態に東京が陥れば、大会期間中で無観客に変更する、あるいはすぐにでも大会を中止すべきなのか。

「その選択はつねに持ってないといけない。また、われわれがそういう意見を言うことはありうる。

そのときに基準となるのは、感染者数や患者数などの数値だけでなく、医療の現場の状況です。病院がコロナ患者でいっぱいで、通常の医療ができないということでは、誰にでも影響が及ぶ可能性が出てくる。そこまで医療機関が危なくなったというところではダメなので、そうなりそうだというときですよね、ストップをかけるのであれば。そうなってまでやるなんてことは、考えられない。

それに変異株の問題も考えておく必要がある。現在のところ変異株が確証を持って、感染が広がりやすい、重症化が起きやすいと判断ができる状況にはなっていない。しかし流動的な考えは持っておかないといけないし、そのための情報収集、ウイルスの監視はやり続けなければいけない。

問題は大会期間中というよりその後

オリンピックの会場そのものがクラスターのるつぼになることは考えがたい。競技場はいろいろなチェックを受けた選手が競技をやっているところなので。ただ観客がいればいるほど、競技場に来る前後の行動を含めてその中の人がクラスターの原因になるかもしれない。そのリスクは否定できない。

問題は大会の真っ最中というよりはその後。感染症はその場で現れるのでなくて、その10日くらい前にかかって症状の出た人の話。

いまの時点で感染者が増えているとして、その数字はいまかかった人でなくて、1週間から10日くらい前の感染の結果を見ていることになる。となるとオリンピックの真ん中あたりに感染者数が増加したとしても、それは開会式前後のことなので、オリンピックをやろうがやるまいが、関係なく増えていることもある。

安全・安心というのであれば、大会期間中が安全に開かれるだけではなくて、それによる影響があとからでてくることも考えなければならない。オリパラが終わったあとに、オリパラを契機として大きなアウトブレイクやクラスターを起こさないこと、それは避けなければいけない」

だが、そもそも「安全・安心」だったら、毎日の検査は必要ない。安心できないから、毎日の検査を義務付ける。それはもはや「安全ではない」ことを示しているのではいのか。

「安全でいうなら、選手村であるとか、選手の安全はかなり対策が講じられている。 “安心感”のほうについては、国民は漠然とした不安を持っていると思う。不信感と言ってもいいでしょう。でも不安を持ちながら、怖いもの見たさなんですよね。危ないと思うのであれば、本当にオリンピックに行かなきゃいいんです。でもチケットは離さない。

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