足湯付き新幹線「とれいゆ」はココがスゴい "ジョイフルトレイン"はここまで進化した

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釜石線を走る「SL銀河」

相次ぐ新規列車の導入によって、JR東日本エリアの多くの県で、地域の特性をアピールする観光列車が登場したことになる。

「各県ごと導入するといったこだわりはない」と照井氏は言うが、今後もさらに観光列車が登場する可能性については否定しない。昨今の観光列車は車内で食を楽しむ列車が主流を占めているが、足湯や湯上がりの1杯をコンセプトとした列車が今後増えていく可能性もある。

あくまでも“楽しむための鉄道”

とれいゆが走る福島―新庄間は、正式には新幹線区間でない。在来線も走行する区間であるため、運行速度は在来線並みに抑えられている。とはいっても、とれいゆはれっきとした新幹線車両。「高速走行は性能的には可能。実際に郡山―福島間で運行試験も行っている」とJR東日本も認める。

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車両の側面に描かれた「とれいゆ」のロゴ

だとしたら、東京―福島の新幹線区間も走れば、首都圏の観光客をダイレクトに山形に運べる。だが、JR東日本の見解は「東京乗り入れは今のところ考えていない」というもの。これは、同社の観光戦略である「乗ること自体を楽しむ」と、高速での移動は両立しないということを意味する。

「新幹線は時間短縮効果を高めることに価値がある。現在、上野東京ラインの工事を進めているように、移動手段としての鉄道については、速度向上と大量輸送という点でレベルアップを考えていく」(照井氏)

つまり、“移動手段としての鉄道”と“楽しむための鉄道”を切り離して、それぞれが機能強化を追求していくというわけだ。こうした状況下においては、寝台特急「北斗星」「カシオペア」のような、旅の楽しみと移動と両立させる鉄道の居場所はないのかもしれない。

(撮影:尾形文繁)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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