さよならオデッセイ!時代を作った花形の終焉 ジャンルを確立するも25年で役割りを果たす

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ホンダとしては、なんとかこのブームの波に乗りたい。しかし、生産ラインを一から立ち上げていては時間がかかる。そこで苦肉の策として、乗用車の生産ラインを使ってミニバンを作ることになった。それが初代オデッセイであった。

初代オデッセイはアコードのメカニズムを流用して作られた(写真:本田技研工業)

初代オデッセイは、1650mm程度の低い全高にスライドドアではなくヒンジドアの5ドアを備えていたことが特徴で、“背の低いミニバン”というよりも、“背の高い3列シートの乗用車”というクルマであったが、これは乗用車の生産ラインを流用する都合で生まれた形だったのだ。

一方、オデッセイを世に送り出したホンダは、その裏でライバルたちのような背が高くスライドドアを持つミニバンを開発していた。それが2年後となる1996年に登場する「ステップワゴン」だ。つまり、今から考えれば、初代オデッセイは2年後にステップワゴンが登場するまでの“つなぎ的な存在”であったのだ。

ステップワゴン登場後もヒットを継続

「背の高いミニバンを作れないから、背の低いミニバンにした」というのが、当時のホンダの本音だ。しかし、そんな事情はユーザーには関係なかった。背の低いオデッセイは、驚くほどのヒット車となったのだ。初代オデッセイは、発売翌年となる1995年の年間販売ランキングで4位となる。これは、ライバルであるエスティマの7位を上回る販売台数だ。

ちなみに1996年に投入された、ステップワゴンも大ヒット車となった。

初代ステップワゴンは当時のワゴンとしては珍しいFF(前輪駆動)を採用(写真:本田技研工業)

1997年の販売ランキングは5位。同年は、トヨタの新型ミニバン「イプサム」が7位、8位がエスティマ、10位がオデッセイとなり、この年はベストセラー10台のうち4台がミニバンになるという、かつてないほどミニバンが売れた年となったのだ。

ここで驚くべきは、普通のミニバンであるステップワゴンが登場してもなお、背の低いミニバンであるオデッセイが売れ続けたことである。今から考えれば、当時はまだまだミニバンに対して“商用バンの派生”という古いイメージが根強かった。

しかし、オデッセイには、そんな商用バンのイメージは微塵もなく、落ち着いたセダンのような雰囲気を感じさせた。これが、成功の大きな理由であったのだろう。

1999年には第2世代のオデッセイが登場する。

2代目オデッセイはキープコンセプトで登場。V6エンジン搭載のプレステージも追加された(写真:本田技研工業)
基本コンセプトをキープしつつ、使い勝手を磨いたモデルだ。この2代目もスタートダッシュに成功し、2000年の年間販売ランキングで4位を獲得する。

しかし、2001年は9位、2002年は22位と順位は徐々に下落していった。これは強力なライバルが多数、誕生したのが理由だ。

ミニバン市場のヒートアップ

最大の敵は、なんと身内から現れた。ホンダは2000年に初代「ストリーム」を投入する。5ナンバーの5ドアハッチバックに3列シートを詰め込んだ、言ってしまえばオデッセイの小型版だ。これが売れに売れた。なんと2001年の年間販売ランキングで3位になっている。もちろんミニバン最上位だ。

さらに2003年には、ストリームのライバルとなるトヨタの5ドアミニバン「ウィッシュ」が登場した。他にもマツダ「プレマシー」、日産「プレサージュ」「バサラ」といった5ドアの背の低い3列シートが続々と参戦していたのだ。

また、普通のミニバンのライバルも続々と誕生した。エスティマ、セレナ、イプサムに加えて、2001年にトヨタ「ノア/ヴォクシー」が登場。Lサイズのミニバンも多数、新型が登場しており、1997年の日産「エルグランド」、2002年にトヨタ「アルファード」、2004年にホンダ「エリシオン」が生まれている。

ホンダの上級ミニバンとして登場したエリシオン(写真:本田技研工業)

1980年代は牧歌的とも言えたミニバン市場が、1990年代後半から2000年代前半にかけて、一気に参戦者が増えてヒートアップしていったのだ。

オデッセイはその後、2003年に第3世代、2008年に第4世代、そして2013年に現行型となる第5世代へと世代交代する。第3世代は車高をさらに下げて、立体駐車場に収まる1550mmを実現した。ミニバンとしては常識外れの低さだ。

次ページ2代目も年間販売台数4位に!
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