乗務員室にも入らせてもらった。薄いクリーム色に塗り替えられた客室と違い、こちらの室内は緑色。かつては客室の壁もこんな色だったなあ、と思い出す。運転席にはアナログ式のメーターがいくつも並び、マスコンハンドル(自動車のアクセルに相当)とブレーキハンドルが別々に設置されている。
JR東日本をはじめほとんどの鉄道会社では、ハンドルを1本にまとめた「ワンハンドル式」が主流だが、JR西日本では現在も「ツーハンドル式」を採用。ただし、ハンドルを動かす方向は左右から前後に変わり、腕や手首の疲労軽減を図っている。保安設備などの様々な機器が追加されており、まさに「所狭し」という言葉がぴったりだ。
奈良支所に残る2編成の103系は、国鉄末期からJR初期にかけて製造された205系と共通で、普通列車として運用されている。205系は9編成が在籍しているので、103系に乗車できる確率は、単純に考えて11分の2。一発で引き当てることができたら、なかなかラッキーと言える。
一方、奈良線では221系も活躍中だ。こちらは快速運用をすべて担うほか、普通列車としても使用されている。さらに、同じく奈良支所に所属する関西本線やおおさか東線用の201系は、2024年の引退がすでに発表されている。201系よりも古い103系の将来は、決して安泰ではないだろう。
JR西日本に残る103系
JR西日本では奈良線のほか、加古川線と播但線、そして和田岬支線に103系が残る。このうち、加古川線と播但線の103系は両線の電化に合わせてそれぞれ投入されたもので、その際に大幅なリニューアルを実施。側面の窓が一体化され、客室内も印象が大きく変わった。加古川線用の車両は連結運転に備えて前面に貫通扉が設置されるなど、もはや103系とは似ても似つかぬスタイルとなっている。
ただし、これらのリニューアル車両も走行機器は変わっておらず(それゆえ「103系」を名乗っている)、ひとたび走れば国鉄車両特有のモーター音が車内に響く。ドアが閉まる際の「プシュッ」という音も健在だ。目をつぶれば、懐かしい雰囲気に浸れるだろう。
一方、和田岬線に残る水色の103系は、奈良線のそれと同様、比較的原形をとどめている。沿線工場への通勤輸送に特化した和田岬線は、朝夕しか列車が走らず、それゆえ乗車のハードルは高いが、通勤型電車である103系本来の姿を見ることができる。こちらは1編成のみの存在で、検査などの際は他形式が代役を務めており、やはり先行きは決して明るくない。
京阪神の4路線で元気に走る103系。“四車四様”といったいでたちの彼らだが、いずれもかつて日本の経済成長を支えた車両たちだ。その最後の活躍をしっかりと見届けたい。
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