アンミカ「不妊治療での絶望」の先にあった"幸せ" 42歳から4年間治療し、そして現在へ
そう言うと、彼女の大きな瞳が涙でいっぱいになった。
いちばん大変なのは急な診療と仕事調整
49歳となった今、なぜこの話をしようと思ったのか。
「不妊治療をして無事に授かった人が話すことはあるけれど、授からなかったことを語る人はあまりいないなと思いました。
子どもを育むこともすばらしいことだけど、まずは自分が自分を大切にできて、幸せであることが人生において大事なのではと考えています。
つらい気持ちを経験した人は、つらい気持ちを持つ誰かに寄り添える。それが人の最も大きな力だから。私はそう神父様に教わった。そして今、幸せに過ごせています」
今年から、不妊治療に国の助成金が出ることになった。しかし、彼女がいちばん大変だと感じていたのは、生理に合わせた急な診療予約と仕事の調整だという。
「仕事においては不妊治療のことを誰にも言えず、採卵時の麻酔が切れきっていないフワフワした状態で現場に行ったこともありました。ひとりで抱え込んだまま無理をしてしまったことは反省点です。そして、自分で打つ注射や飲み薬によるむくみなどの体調の変化は、身体と心の負担になっていました」
不妊治療の保険適用は、治療中の人にとって金銭面でも大きな救いになりうるだろう。
「でも、それと並行して治療中の人が生きやすい社会の仕組みを整えることも大切だと思います。“保険適用なのだから、もっと気楽に子どもを産めば”という社会からのプレッシャーにならないようなサポートも必要なのでは。
会社でも休暇制度を充実させて、ハラスメントが生じることのないような啓蒙意識と、仕事と治療の両立を支援する職場改革が必要です。そして、不妊治療の精神的なカウンセリングが夫婦で受けられるところも増えればと願います」
アンミカの本領を発揮した発言が頼もしい。
「夫は最近、花を育てています。さっきも“ひまわりの元気がなくて心配だから、写真を送って”と指令が(笑)。“花も大切な命”と、植物のことを愛おしいという夫がかわいくてしかたありません。
ありがたいことに、今は夫婦の周りに子どものような存在の人たちがたくさんいます。みんな、ママ、パパと慕ってくれて幸せです! 社会はすなわち家族で社会にも家族同様の役割がある。後輩や社員を育て社会に貢献することも、子育てと同じだと思い始めています」
そう語るアンミカの表情は、すがすがしいほどに輝いていた。
「子どもができないことで、自分の存在意義を否定するような気持ちになったときもあったけど、自分で自分を愛し、夫を慈しんで生きていきたいと思えています。子どもを産むことに精いっぱいトライした私たち夫婦は、頑張ったからこそ今、ポジティブに笑っていられるんです」
(取材・文/相川由美)
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