新体制のスズキが立ち向かうインド市場の激戦 そしてカリスマ・鈴木修氏は経営の一線から退く
ジェトロのベンガルール事務所の担当者は、「今インドで車を買っている人の多くは初めて車を買う人たちで、ほぼ安価なエントリークラスを買っている。一方、買い換えも増えてきた。そうした人たちの中では高価なSUVと安価な小型車の間の小型SUVを選ぶ人が増えてきている」と話す。
スズキは長らく価格を抑えた小型車を得意としてきた。例えば、現地でスズキが販売する車種で最も安い「アルト」の販売価格は約45万円からだ。SUVでは60万円を切るものから100万円前半のものまで、低価格帯の3車種を展開している。
韓国勢は販売価格が300万円を超える車種も投入してきており、スズキはこうした高級帯の展開ができていない。ルノーが50万円を切る価格のSUVを販売しており、
俊宏社長は2021年2月の中期経営計画発表の席上、「インドの市場で(シェア)50%を死守するというのは非常に大変なことだと思う。現在もSUVセグメントでは他社にリードを許している」と認め、「各セグメントで適切なモデルを投入し、乗用車でシェア50%を維持する」と語った。
SUVの投入が後れた理由
人気化しているSUV市場の出遅れについて、俊宏社長は「さまざまな議論をしていて、投入が遅れた」と話す。シェアは圧倒的だが、有望な市場に対応する機動力を欠いたということだろう。
また、ラインナップ拡充の負担は大きい。スズキの場合、新車開発にかかる費用は約300億円程度。特に小型車を得意としてきたスズキにとって、今後必要になる中型の車種は開発としては未知の領域だ。
スズキは今回の中期経営計画で、
インド政府は環境対応から電気自動車(EV)を推進しており、充電インフラ整備のためのインセンティブ政策などを行っている。だが、スズキはインドでEVを1車種も投入できていない。トップシェアを堅持するためには、車種の拡充と電動化対応の両方を進める必要がある。スズキで技術トップの本田治技監は「(電動化とラインナップ拡充を)同時に進める負担はたしかに大きい。やれる範囲でやっていく」と話す。
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