万全な体調のための「脱プラスチック」のすすめ 「身の回りの化学物質」が私たちに与える危険性

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ところがその後、BPAより強力な合成エストロゲンとしてジエチルスチルベストロール(DES)が発見され、DESは薬剤として市場に投入され、BPAは製造現場で活躍することになった。

それからの数十年間、このふたつの化学物質は私たちの生活を満たしていったが、社会学者のスーザン・ベルは、ある記事の中でDESについて、「長期的には女性に深刻な被害をもたらした」と指摘した。

妊娠中にDESを投与された母親から生まれた女児たちに、子宮機能不全や膣がんを発症するリスクが激増したのだ。

DESは1971年に使用禁止になったが、兄弟にあたるBPAは使われ続けた。いま、BPAを使ったプラスチック容器から、このエストロゲン加工物が溶け出して、容器内の食品や飲料に混入していることがわかっている。

「BPAフリー」だけでは十分でない

カーペットや電子製品、家具から出る埃にも、同じ化合物が見つかっている。また感熱紙タイプのレシートを指で触ったり、その指を使って食べ物を口に運んだりすると、BPAは体内に取り込まれる。

ある調査において、93%の人の尿から測定可能な量のBPAが検出され、特に肥満の人にその量が多かったと言う。

私たちが曝されるBPAの量は、注射器で投与されるDESの量よりもはるかに少ない。それでもほかの内分泌攪乱物質と同じく、たとえ微量であっても大きな影響を及ぼす。

BPAの影響を懸念する声が大きくなると、多くのメーカーが使用を取りやめて「BPAフリー(使用していない)」の製品を販売した。だからといって、それらの製品が類似の化合物を使って“いない”という意味ではない。

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