奇才が引き出す技術力 “夢の糖”トレハロース《戦うNo.1技術》

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 最大の特徴が、成果が出るのに10~20年かかる「もやもやテーマ」を社長自ら設定する点。昼出社し午後2~3時には帰宅して独学に入る社長の唯一の仕事は、「研究テーマの設定と方向づけ」。狙いは、テーマそのものよりも、その過程にある。

大テーマを研究する途中で副産物的な発見がある。これを林原では「神様のお駄賃」と呼び、「おもちゃ箱」に収納する。現在、「おもちゃ箱」には食品最大手の味の素をも超える5000以上の特許が収納されており、時代のニーズに合わせて製品化する。この長期戦略を守るため、林原は非上場にこだわり続ける。

トップダウン経営の威力 特許・営業戦略にも独自性

1994年トレハロース量産化につながった酵素発見も、「砂糖のようで砂糖でないものをつくる」という、「もやもやテーマ」の過程でもたらされたお駄賃の一つだった。

東京大学大学院で酵素学を研究する伏信進矢助教は「新しい酵素の発見自体は難しくないが、量産化を実現するのは並大抵のことではない」と話す。量産化の過程では加熱が必須だが、熱に弱い酵素も多いためだ。丸田氏が発見した酵素も、実は加熱に耐えられなかった。

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