震災10年で復活、三陸鉄道リアス線の「今」に乗る かつて朝ドラ「あまちゃん」で話題、新駅も誕生

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次の列車で島越へ向かった。現れた車両は開業時からの36-100形と36-200形の2両編成だった。

このタイプは震災の影響を含めて全19両中の11両が廃車され、現在は8両となっている。三鉄は国鉄特定地交線転換初の第三セクター路線のため、以後の量産タイプのレールバスや軽快気動車と違うスタイルをしており、それが独特の“三鉄らしさ”を今に伝える。2両編成のうちの1両(36-109)は、車内を「あまちゃんのロケ風景写真展」としている。

2013年度前期のNHK「朝ドラ」は、震災復興支援の一助にと三鉄沿線を舞台とし、三鉄は「北三陸鉄道」の名で重要な役を務めた。その当時のロケ風景が素朴なスタイルで飾られている。

このほか、2005年と06年に宝くじ助成金で導入されたレトロ車両2両(36-R1・R2)もあり、それで26両となる。

「三陸の地下鉄」と呼ばれるほどの長大トンネルを複数抜けてたどり着く島越駅は、もと北リアス線内では震災復旧の最後の開通区間にある。

鉄道建設公団の建設による近代的で頑丈な高架で谷を渡っていたが、津波はそれをすべて破壊した。そこで、海岸の防潮堤に次ぐ第二の堤防とするべく築堤に改められた。

駅は130mだけ久慈側に移され、可愛らしい駅舎が建つ。旧駅時代から、隣の田野畑駅ともども宮沢賢治の童話の世界観でデザインされたものだ。

駅を出て旧駅に足を運ぶと公園に改められ、一部を壊されながら耐えた宮沢賢治の石碑と、駅施設の中で唯一の遺構となった数段のコンクリート階段が残されている。

だが山肌の2軒を除いて約120軒の集落は消滅した。断崖絶壁の北山崎を巡る観光船乗り場に至る道が延びる目の前で、新たな水門建設が続けられている。

ラストコースは15人の高校生とともに

引き続き久慈を目指す。普代駅は物産センターを兼ね、背後を通る「三陸沿岸道路」の普代ICが最寄りとなったので、「道の駅」に改めるべくトイレの新設工事等が行われている。7月の新装開業を目指している。

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観光客が多い時間帯の列車ならば徐行する景勝の大沢橋梁、安家川橋梁とも素通りし、無数のトンネルで貫いてきた海岸線を離れると線路はようやく平地に出る。

陸中野田駅は野田村の市街地で県立久慈工業高校の最寄り。発時刻は夕刻17時57分とあって男女15人ほどの生徒が乗車して、宮古界隈以来、久しぶりに2桁となった。

久慈まで乗り通し、18時25分発の宮古行きで折り返す。久慈駅界隈には県立高校3校があり、帰宅の高校生は20人程度の乗車だった。陸中野田と普代の下車がまとまっており、以南はまた片手に満たない人数となった。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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