震災10年で復活、三陸鉄道リアス線の「今」に乗る かつて朝ドラ「あまちゃん」で話題、新駅も誕生

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車両基地も宮古に集約された。新たな検修庫が釜石方に設けられ、ホーム付近にかけて車両が留置されている。一方、南リアス線盛、北リアス線久慈の旧車両基地は出先の滞泊設備とされ、盛と久慈に配属されていた社員計70人は15人ずつに所帯を縮小した。

機能を集約して効率化されたが、旧山田線区間を抱えたために車両と要員の総数は増えている。車両は8両増えて26両に、社員数はJRからの出向を含めて40人増え、計135人になった。

宮古駅のもう一点の見どころは、隣接する市役所庁舎である。旧庁舎は閉伊川河口で津波の直撃を受けながらも復活したが、耐震性の劣化を理由に移転を決め、保健センターや市民交流センターともども駅裏に隣接させた。JR山田線移管開業を前にした2018年10月に開庁している。

駅舎側からの連絡跨線橋や庁舎2階のフロアはガラス張りで、カフェのカウンター席に座れば駅や車両基地が目の前に見える。自由に出入りできるので、列車待ちのひとときを過ごしてもよい。

新田老駅も総合事務所と一体で開業

さて、宮古13時27分発の久慈行きは36-700形単行であった。2013・14年に6両が誕生した新潟トランシス製標準スタイルの車両で、震災後、クウェートから500万バレルの原油支援を元に被災各県に支援金を分配、岩手県がその一部を車両購入資金に充てて導入されたものだ。

クウェート支援による車両は、ほかにレトロ車両(36-R3)とお座敷車両(36-Z1)1両ずつもある。この後、36-700形はJR山田線移管時にもJRからの資金提供を受けて8両増備され、保有26両中の14両を占めるようになった。

行政の事務所と一体化して田老の市街地に新設された新田老駅(写真:鉄道ジャーナル編集部)

その列車で踏み出し、目指したのは新田老駅。現在は宮古市域となった田老町は田老駅が玄関だったが、中心から外れていたため、短いトンネル1つを隔てて新駅が作られた。ここも宮古市の出先、田老総合事務所と一体化され、旧事務所から移転に合わせて昨年5月に開業した。

高架ホームから事務所1階に下りると、無料貸自転車の貼り紙。付近の観光スポットへの足として市民以外を対象に貸し出していた。ありがたく拝借してペダルを漕ぐと、すぐに巨大城壁のような津波除け防潮堤に達する。

その防潮堤沿いに1・2階を破壊されながら倒壊を免れた「たろう観光ホテル」が震災遺構として保存されている。さらに閘門をくぐってから漁港を離れると、三陸の名所の一つ、山王岩にたどりつく。断崖の磯に打ち付ける波は「潮騒」そのものだ。土産店や駐車場が賑わう観光地の様子はなく、偶然の貸自転車に導かれた“発見”のようで心地よかった。

引き返して堤防沿いの国道をたどると、田老駅は近い。駅は築堤上にあり、もともと高い防潮堤を望む駅として知られていたが、震災後はより巨大な防潮堤と水門が建設され、民家が点在した農地、昆布の干場はメガソーラーに生まれ変わった。それで今や日中の様子は信号場と思えるほどだ。

ただし、内陸に入ると県立宮古北高校があるのと、新田老駅は狭い街中のため、パーク&ライドで列車を利用するとすれば田老駅のほうが適している。

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