ホンダの「電動化」とトヨタ「水素エンジン」の行方 本当にFCVは救世主なのか? EVを超えるのか?

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水素ステーションの外観(東洋経済オンライン編集部撮影)

水素充填用のスタンドは、技術や法規制とは別に、土地の有効活用の点で普及に疑問が残る。水素スタンド設置には、500平方メートル(約150坪)の土地が必要だ。しかも、そこにビルを建てることができない。元素としてもっとも小さく軽い水素の安全を保つには、青天井(屋根がないこと)でなければならないからだ。150坪の地主が、いつ普及するかわからないFCVのために、ビルを建てられない水素スタンド経営に手を出すとは思えない。

トヨタ自動車の豊田社長、日野自動車の下社長、いすゞ自動車の片山社長による経堂記者会見の様子(写真:トヨタ)

トヨタは日野自動車と、ホンダはアメリカのゼネラルモーターズ(GM)と、物流でのFCV適応も考えているようだ。しかし、トラックやトレーラーは乗用車と違い生産財であり、原価が何より重視される。それでなければ輸送費が高くなるからだ。そうした業界へ原価低減の難しいFCVが適応できるのだろうか。またトラックでは総重量の制約があり、EVでもFCVでも装置の重量ぶんが、積み荷の重量に影響を及ぼさないのだろうか。

物流の脱炭素は、鉄道へのモーダルシフトのほうが現実的だ。新型コロナウイルスの影響で、新幹線で荷物を運ぶ貨客兼用の試行もはじまっている。東海道線でいえば“のぞみ”を使う必要はなく、“こだま”でもトラック輸送より速い。

脱炭素の現実的な手段はEVにほかならない

まとめると、一刻も早い脱炭素が求められ、明日の暮らしもままならなくなるかもしれない状況にすでに足を踏み入れていること。それに際し、HVを含めエンジン車の道は閉ざされたのも同然であること。雇用については、将来像を早く明確にし、転職や転業の道を選べる猶予をもたらすこと。水素は、いずれにしても活用が容易ではない。

総じて、同じくEVメーカーを宣言したGMと提携関係を持つホンダの決断が光る。そして10年後には、市場は変わると私は予測する。選択肢があれば、市場動向は企業の思惑ではなく消費者が決める。それらの理由についても、機会があれば話したい。

2040年に電動化100%という決断をしたホンダの三部社長(写真:ホンダ
御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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