ホンダの「電動化」とトヨタ「水素エンジン」の行方 本当にFCVは救世主なのか? EVを超えるのか?
そのうえで、エンジン車でさえ、20%以上の燃費改善を行った結果、ガソリンスタンドが半減する状況となっている。石油業界では、すでに雇用が失われている。直接の自動車業界ではないにしても燃料業界の痛みを理解しなかった責任は重い。廃業したガソリンスタンドの経営者たちは、中古車買い取りや、外装コーティングなど新たな事業で生き残りをはかっている。
水素エンジンには大きな課題がある
次に、水素を使ったエンジンや燃料電池でも、EVに代替できるのではないかとの説がある。それも疑問が多い。
ガスを燃料としたエンジンは、十分な出力を得にくいという根本的課題がある。身近な例では、液化石油ガス(LPG=プロパンガス)を使う日本のタクシーは、昔から出力が足りないことで知られている。一方で排出ガス浄化の点では有利で、燃料代も安上がりなので、タクシーは愛用してきた。
なぜガス燃料は出力が上がりにくいのか。たとえば、膨らませた風船にさらに息を吹き込むのは苦しい。このことからガスが充満した中へ、ガスを追加する難しさを体験できる。しかし、祭りの風船ヨーヨーのように、膨らんだ風船に水(液体)を足すことは難しくはない。それでも、燃費向上のため筒内直噴化されたエンジンに液体燃料を噴射するには、高圧ポンプが必要だ。
BMWは、15年近く前に水素エンジン車の開発を行った。7シリーズという最上級4ドアセダンの排気量6リッターV型12気筒エンジンを利用しても、出力はガソリンエンジンの半分ほどしか出ず、BMWはEV開発へ転換し「i3」の販売につなげた。
BMW7シリーズの水素タンクは、-253℃という液体水素を車載する魔法瓶のような容器だったが、満タンにしても1週間ほどしか保持できなかった。日本では、トヨタもホンダも樹脂製のタンクに70MPa(メガパスカル=約700気圧)という高圧ガスで水素を車載する。だが、そもそも固体高分子型燃料電池の製造に手間や精度が必要なうえ、700気圧に達する高圧水素を安全に貯められるタンク製造も容易ではない。原価を下げる難しさがある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら