北朝鮮の生命線「中朝国境」はいつ開放されるか 今春から物資が流入、海上貿易も始まったが…

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国境を封鎖したといっても、北朝鮮が完全に閉ざしてきたわけではない。2020年1月末以降も、中朝間の貿易は細々と行われ、とくに北朝鮮は中国から必要な物資は輸入してきたことが判明している。

中国の税関統計によれば、2021年4月、中国から北朝鮮が輸入した品目は91品目で2875万ドルとなっている。前3月と比べると金額で2倍に上った。輸入品目のうちで最も金額が大きいのは化学肥料で、輸入額の半分近くを占めている。田植えなどの農繁期を前に、食料増産に欠かせない肥料が必要となり、輸入したものと思われる。

「経済活動正常化」でもまだまだ時間がかかる

中朝関係に詳しい一般財団法人霞山会の堀田幸裕研究員によれば、2021年第1四半期(1~3月)の貿易統計を見ると、北朝鮮と国境を接する遼寧省や吉林省の比率が極めて低いと指摘する。輸入先1位は山東省で輸入額全体の51%を占め、次に遼寧省が35%、3位は浙江省13%となり、これまで高い比率を占めていた吉林省は1%未満となっている。

これは「陸路を通じた貿易が止まっている影響だ」と堀田氏は説明する。一方で、北朝鮮から中国への輸出先では、1位が遼寧省で84%を占め、2位が吉林省16%と、これら2省が独占している状況だが、すべてを電力の輸出が占めている。「中朝には共同で運営する水力発電所が国境の河川に4カ所あり、送電量が貿易として計上されているだけで、実際に人やモノが動いたわけではない」(堀田氏)。

また堀田氏は今後の国境開放について、「4月ごろから開放するという情報は流れていたが確認できる情報はない。実際にはまだ開放には至っておらず、海上ルートでの交易が少しずつ動き始めているというのが実態ではないか」とみる。

とくに為替レートの動向に関して、対人民元で北朝鮮ウォンが高騰している状況を例に挙げる。中国と国境を接する地域では、2020年6月には1人民元=1210ウォンだったが、2021年6月には1人民元=640ウォンとなった。「ここまでウォンが高騰してきた軌跡をみると、中朝貿易の停滞と一致している。外貨があってもモノを買い付けることができないため、人民元の価値が下落したのではないか」と説明する。

「中朝国境が開放されても経済活動の正常化には時間がかかると現地の人たちは考えているのではないか」。堀田氏はこう分析している。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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