多くの政策当局者がインフレは一時的とみる理由

コロナ禍終わっても多くの失業者が残ったまま

多くの政策当局者がインフレ高進にパニックにならずにいられるのは、依然として世界経済の雇用環境が改善されず、失業者も減らないためだ。 国際労働機関(ILO)によれば、新型コロナウイルス禍によって失われる雇用は今年7500万人分と予測される。コロナがなかった場合との雇用者数のギャップは来年も2300万人に上る見込みだという。

経済協力開発機構(OECD)も、多くの国で来年の失業がコロナ危機前の水準を上回ると予想している。 高失業の環境下では、世界の多くの国・地域で生活費が上昇しているにもかかわらず、仕事を持っている人が大幅な賃金上昇を求めるのは難しいだろう。もちろん、全く昇給がないというわけではなく、米国などで顧客の戻りに合わせて従業員を増やそうとしている業界では賃金が上昇している。

しかし、一部のエコノミストや投資家が恐れる賃金と物価によるインフレスパイラルが近い将来、世界的に喫緊の課題となる可能性は低い。このため、政府と中央銀行は新型コロナに見舞われた経済を財政支出と低金利で支援し続けることができる。

野村ホールディングスの世界市場調査責任者、ロブ・スバラマン氏は「賃金と物価のスパイラルが懸念材料になるには、7-9月(第3四半期)に賃金の伸びが加速することとインフレ期待が急上昇することが必要だ」と述べた。

ここ数カ月にインフレが加速した国・地域は多い。米国では消費者物価の総合インフレ率が5月にここ10年余りで最も高い5%に達した。ユーロ圏インフレ率は2%と欧州中央銀行(ECB)の目標をわずかながら上回った。ドイツ連邦銀行(中銀)は独インフレ率が年末に向けて4%に上昇するとみている。

債券市場のインフレ期待も高まった。米国の5年物ブレークイーブン・レートは5月に2.8%前後に達し、新型コロナ前の水準を大きく上回って推移している。それでも、金融当局はサプライチェーンの目詰まりが徐々に解消されるに伴いインフレ率は再び低下すると論じ、持続的インフレのリスクは低いと主張する。

ECB、緊急購入の高ぺース維持-リスク認識は2018年以来の明るさ

政策当局やエコノミストは今年のインフレ急上昇を説明する際、供給ボトルネックに焦点を絞っている。つまり、サプライチェーンの目詰まり解消にどれだけ時間がかかるかが、恒久的なインフレ上昇が引き起こされるかどうかの鍵になる公算が大きい。 

ソシエテ・ジェネラルの世界チーフエコノミスト、クラウス・バーダー氏は「今高まりつつあるリスクは、一時的な物価圧力が長期化してインフレ期待に埋め込まれ、賃金上昇圧力を引き起こすことだ」と指摘し、「賃金と価格のスパイラルを引き起こすには何年もかかるため、最終的にどうなるのかは当分の間分からない」と語った。

原題:Millions of Missing Jobs Should Make Inflation Hawks Think Twice(抜粋)

(第8段落を追加します)

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著者:Enda Curran

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